【ことわざ】
鼬の道切り
【読み方】
いたちのみちきり
【意味】
交際や行き来、便りなどが途絶えることのたとえ。


【英語】
・not to write to or visit someone(手紙や訪問などの交流をしなくなること)
【類義語】
・鼬の道(いたちのみち)
・音信不通(おんしんふつう)
・疎遠(そえん)
【対義語】
・水魚の交わり(すいぎょのまじわり)
「鼬の道切り」の語源・由来
「鼬の道切り」は、鼬(いたち)が人の行く手を横切ることを不吉な前兆とする俗信と、鼬の通路を遮ると同じ道を再び通らないという俗信から生まれた言い方です。そこから、人と人との往来、交際、音信が絶えることを表すことわざとして使われるようになりました。
もとの発想では、「道切り」は、道を切る、つまり通り道を遮ることに関わります。鼬の通路を人が断つと、鼬はその道を避けると考えられ、その「二度と通らない」という考えが、人間関係の断絶を表す比喩へ移っていきました。
ただし、この由来は実際の動物の習性をそのまま述べるものではなく、民間に伝わった俗信として理解するのが大切です。鼬は同じ通路を二度と使わないといわれてきましたが、実際には同じ通路を何度も利用することがあります。
古い用例としては、浮世草子(うきよぞうし)『世間胸算用(せけんむねさんよう)』(1692年・江戸時代前期、井原西鶴作)に、「鼬(イタチ)の道切(ミチキル)」という形が出てきます。この作品は大みそかを背景に町人たちの暮らしを描いた作品で、ここでは「鼬の道を切る」という動作に近い形が、早い時期の表れとして重要です。
この段階では、「鼬の道切り」という名詞形だけでなく、「鼬の道を切る」という動詞的な言い方も用いられていました。道を遮るという具体的な行為から、訪問や便りが途絶えるという抽象的な意味へ広がる途中の形といえます。
さらに、浄瑠璃『百合若大臣野守鏡』(1711年ごろ・江戸時代前期)には、「烏なき、とんびなき、すずめの小をどり、いたちの道切」という例が出てきます。ここでは「いたちの道切」という形がすでにまとまった表現として使われ、鳥や動物にまつわる言い回しの中に並んでいます。
また、浄瑠璃『傾城思升屋』(1715年ごろ・江戸時代前期)には、「此程は、鼬鼠(イタチ)の道を切った様になぜ訪れもない事ぞ」という用例があります。これは「このごろは、鼬の道を切ったように、なぜ訪ねてこないのか」という意味で、現在の「交際や音信が絶える」という意味にかなり近い使い方です。
この用例からは、「鼬の道を切る」が単なる動物の通り道の話ではなく、人が来なくなること、訪問が途絶えることを表す比喩として定着していたことが分かります。特に「訪れもない」という言葉と結びついているため、交際の断絶を表す用法がはっきり読み取れます。
後の時代には、「鼬の道」という短い形も広まりました。洒落本『志羅川夜船』(1789年・江戸時代後期)には「いたちの道にしたよ」という用例があり、そこでも人との行き来や交際を断つ意味で使われています。
このように、表現の形は「鼬の道を切る」「鼬の道切り」「鼬の道」などへ分かれましたが、中心にある意味は共通しています。どの形でも、いったん切れた通路をもう通らないという俗信をもとに、往来・交際・音信が絶えることを表します。
「鼬の道切り」は、突然の別れや連絡の途絶を、自然界の動物にまつわる俗信を通して言い表したことわざです。今では迷信そのものを信じるための言葉ではなく、人間関係がぱったり途絶える様子を、少し古風で印象深く表す言い方として受け継がれています。
「鼬の道切り」の使い方




「鼬の道切り」の例文
- 卒業後、あれほど親しかった友人と鼬の道切りになり、近況も分からない。
- 取引先の担当者が退職してから、会社同士の交流まで鼬の道切りになった。
- 隣に住んでいた家族が遠くへ越して以来、年賀状も来ず、鼬の道切りとなった。
- 毎月集まっていた仲間たちは、代表者が引っ越したのを境に鼬の道切りになった。
- 兄は昔の恩師と鼬の道切りになったことを悔やみ、同窓会で再会を願った。
- 長く続いた文通が突然止まり、二人の関係は鼬の道切りのようになった。
主な参考文献
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館『日本大百科全書』小学館、1984〜1994年。
・Electronic Dictionary Research and Development Group『JMdict』。
・井原西鶴『世間胸算用』1692年。
・『百合若大臣野守鏡』1711年ごろ。
・『傾城思升屋』1715年ごろ。
・『志羅川夜船』1789年。























