【ことわざ】
七度探して人を疑え
【読み方】
ななたびさがしてひとをうたがえ
【意味】
物が見当たらないときは、何度もよく探したうえでなければ、人を疑ってはいけないという戒め。軽々しく他人に疑いをかけないこと。


【英語】
・Be on sure ground before you accuse someone(人を責める前に、確かな根拠を持て)
【類義語】
・七度尋ねて人を疑え(ななたびたずねてひとをうたがえ)
【対義語】
・人を見たら泥棒と思え(ひとをみたらどろぼうとおもえ)
「七度探して人を疑え」の語源・由来
「七度探して人を疑え」は、物がなくなったときにすぐ人を疑わず、まず自分で十分に探すべきだという生活上の戒めから生まれたことわざです。ここでの「探す」は、なくした物のありかを求めることを指します。似た形の「七度尋ねて人を疑え」では、「尋ねる」が「探す」の意味で用いられています。
「七度」は、必ず七回だけという意味に限りません。今日では「ななたび」と読むのが一般的ですが、「しちど」ともいい、「七」は多くの回数を象徴する数として働いています。そのため、このことわざでは「何度も繰り返して、あちこちをよく探す」という意味を担っています。
古い形としては、江戸時代前期の俳書『毛吹草(けふきぐさ)』(1645年・江戸時代前期、松江重頼著)が重要です。『毛吹草』は、俳諧の作法や発句・付句の例のほか、季語や俚諺(りげん)などを収めた書物です。その巻二に「七どたづねて人うたがへ」という形があり、早い時期から、物を探すことと人を疑うことを結びつけた教えとして知られていたことが分かります。
江戸時代中期には、浄瑠璃『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』(1748年・江戸時代中期、竹田出雲・三好松洛・並木千柳合作)にも、「七度尋て人疑へじゃ」という形が出てきます。この作品は大坂竹本座で初演された全十一段の浄瑠璃で、のちに歌舞伎にも広がった代表的な作品です。そこにこのことわざが用いられていることから、江戸時代には舞台のせりふとしても通じるほど、広く知られた言い方になっていたといえます。
明治時代には、泉鏡花の小説『婦系図(おんなけいず)』(1907年・明治40年、泉鏡花著)にも「七度(ななたび)捜して人を疑えじゃ」という形が出てきます。電車内で掏摸(すり)をめぐる騒ぎが起こり、乗客があれこれ疑いを口にする場面で、年配の人物がこのことわざを持ち出します。ここでは、証拠がはっきりしないまま人を疑うことへの戒めとして働いています。
このように、「七度尋ねて」「七度捜して」「七度探して」という形は、表記や言い回しを少し変えながら受け継がれてきました。もとの場面はなくし物ですが、現在では、誰かを責めたり疑ったりする前に、自分の思い違いや見落としを十分に確かめるべきだ、という広い教えとしても使われます。人を疑う言葉は、いったん口にすると相手を傷つけることがあります。その前に、まず自分の目と心で落ち着いて確かめることを促すのが、このことわざの大切なところです。
「七度探して人を疑え」の使い方




「七度探して人を疑え」の例文
- 七度探して人を疑えというように、落とした財布を人のせいにする前に家中を探した。
- 妹の消しゴムがなくなったが、母は七度探して人を疑えと言って机の下まで確かめさせた。
- 会議の資料が見つからず、七度探して人を疑えの心で書棚と鞄を見直した。
- 友人を疑いかけたが、七度探して人を疑えを思い出し、自分の記憶をたどった。
- 祭りの準備で旗がなくなり、七度探して人を疑えと皆で倉庫を探し直した。
- うわさだけで決めつけず、七度探して人を疑えの姿勢で事実を確かめた。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・松江重頼『毛吹草』1645年。
・竹田出雲・三好松洛・並木千柳『仮名手本忠臣蔵』1748年。
・泉鏡花『婦系図』1907年。























