【ことわざ】
金請けするとも人請けするな
【読み方】
かねうけするともひとうけするな
【意味】
借金の保証人にはなっても、人の身元や人柄の保証人にはなるなという戒め。人の保証に立つと、思わぬ面倒や責任を負うことが多いという意味。


【英語】
・Never stand surety for anyone.(人の保証人になるな)
【類義語】
・金請に立つとも人請けに立つな(かねうけにたつともひとうけにたつな)
「金請けするとも人請けするな」の語源・由来
「金請けするとも人請けするな」は、借金の保証と人物の保証を対比し、人を保証することの難しさを戒めたことわざです。「金請け」は借金の保証人、「人請け」は奉公人などの身元保証を意味します。
このことわざの背景には、近世の社会で用いられた「請人」という制度があります。請人は、借金・売買契約・人物などについて、本人が約束を果たさないときに代わって責任を負う保証人を指し、近世には金請・人請・地請・店請などの区別がありました。
金請けの場合、問題の中心は借金です。返すべき金額や相手が比較的はっきりしているため、たとえ責任を負うとしても、どの範囲の負担になるかを考えやすい面があります。
これに対して人請けは、人物そのものの身元やふるまいを引き受けることです。奉公人などの行動、勤め先での問題、人柄への信用まで関わるため、金額だけでは測れない厄介な責任を招くことがありました。
「人請け」という言葉は、江戸時代前期の仮名草子『悔草』(1647年刊)に古い用例があります。そこには「人請に立申まじく並口あひ仕間敷事」とあり、人の保証に立つことを避けよという戒めの文脈で使われています。
この段階で、すでに「人請け」は単なる手続きではなく、慎重に避けるべき責任として意識されていたことが分かります。人の身元を引き受ける行為は、信用や義理だけで簡単に決められない重い約束だったのです。
ことわざとしての古い形は、江戸時代後期の諺語辞典『譬喩尽(たとへづくし)』(1786年序、松葉軒東井編)に見えます。この書物はことわざを中心に、詩歌・童謡・流行語・方言などを広く集めたいろは順の辞典です。
『譬喩尽』に見える形は、「金請に立つとも人請けに立つな」です。「請に立つ」は保証人となることを意味する言い方で、のちに「金請けするとも人請けするな」という形でも用いられるようになりました。
「立つ」と「する」は言い回しこそ違いますが、どちらも保証を引き受けるという意味でつながっています。そのため、「金請に立つとも人請けに立つな」と「金請けするとも人請けするな」は、同じ教訓を表す形として受け継がれてきました。
このことわざは、金銭の保証なら安易にしてよい、という意味ではありません。むしろ、金の保証でさえ危ういが、人の性格や行動まで保証することはさらに難しい、という強い戒めを表しています。
現在では、友人や知人のために保証人になるかどうかを考える場面で使われます。親切心だけで人の責任まで背負うと、あとで思いがけない迷惑を受けることがある、という生活上の知恵を伝えることわざです。
「金請けするとも人請けするな」の使い方




「金請けするとも人請けするな」の例文
- 親しい友人に頼まれても、金請けするとも人請けするなと考え、身元保証人になることは断った。
- 金請けするとも人請けするなということわざの通り、人の行動まで保証するのは簡単ではない。
- 会社の紹介を頼まれた父は、金請けするとも人請けするなを思い出し、軽く引き受けなかった。
- 相手の人柄をよく知らないまま保証人になるのは、金請けするとも人請けするなに反する。
- 親切のつもりで人の保証に立つと、金請けするとも人請けするなの教えを思い知ることがある。
- 先生は、友人を助けたい気持ちは大切だが、金請けするとも人請けするなという言葉も忘れてはいけないと話した。
主な参考文献
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・松葉軒東井編『譬喩尽』1786年序。
・『悔草』1647年刊。























