【故事成語】
焔焔に滅せずんば炎炎を若何せん
【読み方】
えんえんにめっせずんばえんえんをいかんせん
【意味】
火は燃え始めたときに消さなければ、盛んに燃え上がってからではどうにもならない。災いは小さいうちに防がなければ、手の施しようがなくなるという戒め。


【英語】
・nip something in the bud(悪いことが大きくなる前に早く止める)
【類義語】
・涓涓塞がざれば終に江河となる(けんけんふさがざればついにこうがとなる)
・小事は大事(しょうじはだいじ)
・大事は小事より起こる(だいじはしょうじよりおこる)
【対義語】
・後の祭り(あとのまつり)
「焔焔に滅せずんば炎炎を若何せん」の故事
「焔焔に滅せずんば炎炎を若何せん」は、中国の古典『孔子家語(こうしけご)』観周に出てくる「焰焰不滅,炎炎若何」という言葉にもとづきます。『孔子家語』は、孔子の言行や孔子と門人との問答などを集めた書物で、現行本は三国時代の魏の王粛に関わる本として伝わります。
『孔子家語』観周では、孔子が周へ行き、太廟の右の階の前に立つ金人を見たとあります。金人とは、口を三重に封じられた人形のような像で、その背には、人が言葉や行いを慎むべきことを戒める銘文が刻まれていました。
その銘文には、「無多言,多言多敗」「無多事,多事多患」とあります。多くを言いすぎれば失敗が多くなり、多くのことにむやみに関われば災いも多くなる、という慎みの教えです。
続いて、「勿謂何傷,其禍將長」「勿謂何害,其禍將大」とあります。少しぐらいなら何の傷にもならない、何の害にもならないと思っていると、その災いは長く伸び、大きくふくらむという意味です。
その流れの中に、「焰焰不滅,炎炎若何」が出てきます。「焰焰」は、まだ小さく燃え始めた火を表し、「炎炎」は、勢いよく燃え広がった火を表します。
この一節は、小さな火をその場で消さなければ、大きな炎になったあとではどうしようもない、という意味です。火のたとえを用いて、問題や災いは小さいうちに防ぐべきだと教えています。
同じ銘文には、「涓涓不壅,終為江河」ともあります。細い水の流れもせき止めなければ、ついには大河になるという意味で、小さいものが大きく育つ危うさを、火と水の二つのたとえで重ねて示しています。
この金人の銘は、前漢の劉向が編んだ故事・伝説集『説苑(ぜいえん)』敬慎にも近い形で出てきます。『説苑』は君主を戒めるための前賢先哲の故事を集めた二十巻の書物で、そこでは「熒熒不滅,炎炎奈何」という形で記されています。
さらに、兵法書として伝わる『六韜(りくとう)』文韜・守土にも、近い表現として「熒熒不救、炎炎奈何」とあります。小さな火を救い消さなければ、盛んな炎になったときにどうしようか、という考え方は、古くから政治や身の処し方を戒める言葉として受け継がれてきました。
日本語では、「焔焔」「燄燄」、「若何」「如何」などの表記が用いられます。どの形でも、火がまだ小さいうちに消すという具体的なたとえから、災いの芽を早く取り除くという教えを表します。
現在の「焔焔に滅せずんば炎炎を若何せん」は、悪い習慣、争い、失敗、病気、仕事上の問題などを小さいうちに正すべきだという戒めとして用いられます。小さな火を軽く見る心こそが、やがて大きな炎を招くというところに、この故事成語の大切な意味があります。
「焔焔に滅せずんば炎炎を若何せん」の使い方




「焔焔に滅せずんば炎炎を若何せん」の例文
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主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Cambridge University Press『Cambridge English Dictionary』。
・王粛注『孔子家語』三国時代。
・劉向編『説苑』前漢。
・『六韜』。























