【ことわざ】
家は弱かれ主は強かれ
【読み方】
いえはよわかれぬしはつよかれ
【意味】
家屋は弱くても、家の主は強く頼もしくなければならないという戒め。家を支える者のしっかりした態度を重んじることのたとえ。


【類義語】
・箸と主とは太いがよい(はしとしゅうとはふといがよい)
「家は弱かれ主は強かれ」の語源・由来
「家は弱かれ主は強かれ」は、建物としての家の弱さと、そこに暮らす人々を支える主の強さとを対照させたことわざです。「家」は、財産や家柄ではなく、ここでは家屋そのものを指します。住まいの造りが弱く、雨風の折に不安を覚えるような家であっても、その主まで頼りなくては、家族は安心して暮らせないという考えを表しています。
「弱かれ」と「強かれ」は、互いに向かい合う形で置かれています。家の強さだけに頼るのではなく、いざという時に判断し、皆を落ち着かせ、暮らしを守る者の頼もしさを求める言い方になっています。ここでいう「強い」は、乱暴さや力任せの振る舞いではなく、家を支える者としてしっかりしていることを表します。
古い用例として、『毛吹草(けふきぐさ)』(寛永15年〔1638年〕序・正保2年〔1645年〕刊、江戸時代前期、松江重頼編)の巻二に、「いゑはよはかれぬしはつよかれ」とあります。現在の表記とは仮名遣いや漢字の用い方が異なりますが、言葉の並びと意味の骨組みは、今に伝わる形とほぼ同じです。
『毛吹草』は、俳諧(はいかい)の作法や、句作に役立つ言葉・作例などを集めた七巻五冊の書物です。巻二には、四季や恋に関わる言葉とともに、「世話」と呼ばれる、人々の間で用いられていた言い回しが収められ、その中には多くの俚諺(りげん:世間に伝わることわざ)が含まれています。
このことわざが巻二の「世話」に収められていることは、特定の物語の一場面から生まれた言葉というよりも、江戸時代前期にはすでに、人々に通じる戒めとして扱われていたことを示しています。俳諧を作る人は、こうした身近な言い回しを、句の取り合わせや発想に生かしました。そのため、『毛吹草』は、当時の生活感覚を伝えることわざを残す書物としても、大切な役割を果たしています。
原文の「いゑ」は現代の「家」に、「よはかれ」は「弱かれ」に改めて表されるようになりました。一方、「主は強かれ」という後半は、家を守る者に頼もしさを求める言葉として、そのまま受け継がれています。表記は読みやすく整えられても、弱い家屋と強い主を並べる対比は変わっていません。
近い言い方として、「箸と主とは太いがよい」があります。折れにくい太い箸が頼りになるように、仕える相手や家を支える主も、しっかりして頼りになる者がよいというたとえです。「家は弱かれ主は強かれ」も、物の丈夫さと人の頼もしさとを比べながら、最後には人の在り方を重んじる点で通じています。
このように、「家は弱かれ主は強かれ」は、江戸時代前期にはすでに伝わっていた、家の主の頼もしさを重んじることわざです。住まいが立派であるかどうか以上に、そこに暮らす人々を支える者が、困難の中でも落ち着いて立つことの大切さを言い表しています。
「家は弱かれ主は強かれ」の使い方




「家は弱かれ主は強かれ」の例文
- 古い家が嵐で揺れても当主が家族を落ち着かせた場面は、家は弱かれ主は強かれの教えを思わせる。
- 祖父は、粗末な住まいでも家族を守る心は失うまいと、家は弱かれ主は強かれを口にした。
- 家は弱かれ主は強かれということわざには、家を支える者の頼もしさを求める昔の考え方が表れている。
- 昔の物語では、倒れかけた家を前にしても主が動じず、家は弱かれ主は強かれにふさわしい姿を示した。
- 防災を題材にした劇で、児童たちは家は弱かれ主は強かれという言葉をもとに、家族を導く役を演じた。
- 村人は、火事の中で皆を安全な場所へ導いた家長を見て、家は弱かれ主は強かれとたたえた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・松江重頼編『毛吹草』正保2年、1645年。























