【ことわざ】
金は片行き
【読み方】
かねはかたいき
【意味】
金は、ある所には多く集まる一方、ない所には少しも集まらないということ。


【英語】
・Money makes money.(金がさらに金を生む)
【類義語】
・金と子供は片回り(かねとこどもはかたまわり)
【対義語】
・金は天下の回り物(かねはてんかのまわりもの)
・金銀は回り持ち(きんぎんはまわりもち)
「金は片行き」の語源・由来
「金は片行き」の「金」は、金属としての金ではなく、貨幣や金銭を指します。「片行き」は、一方にばかり偏ることを意味し、金銭が均等に行き渡らず、限られた所に集中する様子を表しています。
「片行」は「かたいき」と読み、「かたゆき」ともいいます。「片」は一方だけという意味をもち、「行き」は物事が向かう先を表します。二つを合わせると、一方にだけ向かって偏ることになります。
「片行」に当たる古い用例は、『大学垂加先生講義(だいがくすいかせんせいこうぎ)』(1679年・江戸時代前期、山崎闇斎講)にあります。この書物は、中国の古典『大学』について山崎闇斎が行った講義を記したものです。
その中に、「二気五行の数ある中には偏いきがある筈也」とあります。「二気(にき)」は陰と陽、「五行(ごぎょう)」は木・火・土・金・水という五つの要素を指し、さまざまなものの働きには、一様ではない偏りがあるという文脈で使われています。
ここに出てくる「偏いき」は、まだ金銭について述べた言葉ではありません。しかし、物事が一方へ偏ることを「かたいき」と表す言い方が、江戸時代前期にはすでに用いられていたことが分かります。
「金は片行き」は、この「片行き」を金銭の動きに当てはめたことわざです。金は誰の所へも同じように向かうのではなく、ある所には重なって集まり、ない所にはなかなか近づかないという、世の中の偏りを言い表しています。
すでに金を持つ人は、その金を商売の元手にしたり、土地や品物を買ったりして、さらに利益を得る機会を作れます。反対に、元手を持たない人は、利益につながる機会を得ること自体が難しいため、金が同じ所へ重なって集まるように映ります。
よく似たことわざに、「金と子供は片回り」があります。「片回り」も、一方にばかり巡ることを表し、金や子供は、ある家には多く集まるのに、ない家には少しも恵まれないという、世の中の不均衡を言い表しています。
一方、「金は天下の回り物」は、金銭は一人の所にとどまらず、世の中を巡るものだという考えを表します。「金銀は回り持ち」も同じく、金は人から人へ移っていくものだという意味です。
したがって、「金は片行き」と「金は天下の回り物」は、金の動きを反対の立場から捉えたことわざです。前者は富が一部に集中する現実を述べ、後者は、今は金がなくても、いつか自分の所へ巡ってくるという希望を含んでいます。
『藤本義一の金に泣く人笑う人』(平成15年、藤本義一著)でも、「金は片行き」と、金は思いがけず手に入るという趣旨の言葉とが、対照的に掲げられています。このことからも、金銭の動きをめぐる相反した見方が、現代まで語り継がれていることが分かります。
「金は片行き」は、金を持つ人を責めるためだけの言葉ではありません。金銭や利益が一部に偏り、持つ者と持たない者との差が広がる世の中のありさまを、やや皮肉を込めて言い表すことわざです。
「金は片行き」の使い方




「金は片行き」の例文
- 資金の豊かな会社に有利な商談が重なり、金は片行きだと実感した。
- 祖父は、財産のある家にもうけ話が集まる様子を見て、金は片行きと言った。
- 売上の多い店ほど宣伝に費用をかけられる現状は、金は片行きという見方に重なる。
- 学校祭の模擬店では、元手の多い班がさらに利益を上げ、金は片行きの一例となった。
- 支援金が一部の団体に偏るたび、地域の人々は金は片行きだと嘆いた。
- 金は片行きと決めつけず、小さな事業にも機会が届く仕組みを整える必要がある。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・西順蔵ほか校注『日本思想大系31 山崎闇斎学派』岩波書店、1980年。
・藤本義一『藤本義一の金に泣く人笑う人』青春出版社、2003年。























