【ことわざ】
食い物と念仏は一口ずつ
【読み方】
くいものとねんぶつはひとくちずつ
【意味】
食べ物は、少量でも皆に一口ずつ分け、念仏も一人一人が口に唱えるのがよいということ。食べ物を独り占めせず、全員に行き渡らせるべきだという教え。


【英語】
・Share and share alike.(皆で等しく分け合う)
【類義語】
・念仏と食い物は一口が大事(ねんぶつとくいものはひとくちがだいじ)
「食い物と念仏は一口ずつ」の語源・由来
「食い物」は食べ物を指し、「一口」は、一度に口へ入れる量や、わずかな食べ物を表します。そのため、「食い物は一口ずつ」とは、食べ物が十分になくても、一人だけが多く取るのではなく、皆の口へ少しずつ行き渡らせるという意味です。
「念仏」は、仏を心に思い、その名を声に出して唱える行いです。日本では、「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と唱える称名念仏(しょうみょうねんぶつ)が広く行われ、日常の言葉でも「念仏を唱える」という形で定着しました。
このことわざは、「一口」という言葉を、食べ物の一口分と、一人一人が自分の口で唱える念仏とに重ねています。同じ「口」を軸に二つの行いを並べることで、「食べ物も念仏も、皆が一口ずつ受け持つ」という教えを、調子よく覚えやすい形にまとめています。
念仏の部分は、宗教上の教えを詳しく説くためのものではなく、皆が口々に唱える身近な行いを、食べ物の分け方に結び付けたものです。食べ物がわずかしかなくても、だれも除かず全員に分けるよう促すところに、このことわざの大切な意味があります。
青森県南部地方で20世紀に集められたことわざには、階上地方の「喰物と念仏は一口ずつ」と、五戸地方の「食べ物と念仏ァ一口ずつ」という形が残っています。前者は、荻沢甚作が郷土雑誌『はしかみ』(昭和27年創刊)に長年連載した「地方俚諺集」に、後者は、能田多代子『青森県五戸語彙』(昭和38年)に収められています。
これらの記録では、「食い物」「喰物」「食べ物」という表記や、「は」が土地の発音を写した「ァ」となる形が並んでいます。意味が異なるのではなく、地域で口伝えに使われてきたことわざが、発音や書き手の表記によって、少しずつ形を変えていたことを示しています。
現在は、「食い物と念仏は一口ずつ」という形のほか、「食べ物と念仏は一口ずつ」という言い方も用いられます。「食い物」と「食べ物」は表現の違いにすぎず、どちらも、少量であっても全員に一口ずつ分けるという同じ教えを表します。
このことわざが大切にするのは、一人分を大きくすることではなく、だれにも一口が届かない状態を作らないことです。食べ物の分配に限らず、わずかな物でも皆で分かち合う心を説く言葉として用いられます。
「食い物と念仏は一口ずつ」の使い方




「食い物と念仏は一口ずつ」の例文
- 祝いの菓子は数が少なかったが、食い物と念仏は一口ずつと、家族全員に分けた。
- 祖母は食い物と念仏は一口ずつと言って、最後の団子を四つに切った。
- 遠足のおやつが足りないと分かると、班長は食い物と念仏は一口ずつを思い出し、皆で分けることにした。
- 差し入れの果物は少量だったが、食い物と念仏は一口ずつの心で、職場の全員に行き渡らせた。
- 地域の集まりでは、食い物と念仏は一口ずつにならい、珍しい料理も少しずつ取り分けた。
- 食い物と念仏は一口ずつというように、わずかな食料でも独り占めせず、皆で分かち合うことが大切だ。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・Cambridge University Press, Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus.
・『青森県史 民俗編 資料 南部』青森県、2001年。
・階上村郷土会編『はしかみ』1952年~。
・能田多代子『青森県五戸語彙』自刊、1963年。























