【ことわざ】
口自慢の仕事下手
【読み方】
くちじまんのしごとべた
【意味】
話すことは達者だが、実際の仕事をさせると、さっぱりできないこと。


【英語】
・be all talk and no action.(口ばかりで実行しない)
・A long tongue is a sign of a short hand.(よくしゃべる人は手が動かない)
【類義語】
・口叩きの手足らず(くちたたきのてたらず)
・口上手の商い下手(くちじょうずのあきないべた)
【対義語】
・口も八丁手も八丁(くちもはっちょうてもはっちょう)
「口自慢の仕事下手」の語源・由来
「口自慢の仕事下手」は、「口自慢」と「仕事下手」という正反対の評価を結び付けたことわざです。「口」は、体の一部を指すだけでなく、「口に出す」「言葉」といった意味にも用いられます。一方、「下手」は、物事の扱い方や技量が劣っていることを表します。
このことわざの「口自慢」は、自分の功績を誇って話すことだけを指すのではありません。「話すことだけは巧みである」「言葉を並べることには長けている」という意味に働いています。そこに「仕事下手」を続けることで、話す能力と、実際に物事を行う能力との大きな隔たりを表しています。
もとになったのは、よくしゃべる人は口ばかりを動かし、仕事をする手が動かなくなりやすいという、日常生活から生まれた見方です。言葉ではいかにも立派に聞こえても、実際に仕事を任せると成果を上げられない人の姿を、「口」と「仕事」との対照によって簡潔に言い表しています。
同じ考え方を示す言葉に、「口叩きの手足らず」があります。「口叩き」は盛んにしゃべること、「手足らず」は仕事をする手の働きが足りないことを表し、おしゃべりは達者でも仕事はできないという意味になります。また、「口上手の商い下手」は、客への話し方は巧みでも、実際の商売はうまくできないことをいいます。
このように、口の働きと手仕事の能力とを並べ、人の働きぶりを評する言い方は、古くから日本語のことわざに用いられてきました。江戸時代後期には、その両方に優れた人を表す「口も八丁手も八丁」が、十返舎一九の黄表紙『的中地本問屋(あたりやしたじほんどいや)』(1802年・江戸時代後期、十返舎一九著)に出てきます。
さらに、小林一茶の『八番日記』(1821年・江戸時代後期)には、語順を入れ替えた「手八丁口八丁」という形が使われています。これらは「口自慢の仕事下手」の直接の原形ではありませんが、「口」と「手」を対にし、話す能力と実際に行う能力とを比べる発想が、江戸時代の言葉の中に定着していたことを示しています。
「口も八丁手も八丁」が、話すことにも仕事にも優れた人を表すのに対し、「口自慢の仕事下手」は、話すことだけが目立ち、実際の能力が伴わない人を表します。同じ「口」と「仕事」の組み合わせを用いながら、前者は両方の巧みさを示し、後者は両者の不つり合いを戒める言葉となっています。
また、「口が動けば手が止む」は、おしゃべりに夢中になったために、その場の作業が進まなくなることをいいます。これに対して、「口自慢の仕事下手」は、話すことは得意でも、もともと仕事の能力が乏しいという、人の普段の性質や働きぶりを批判する場合に用います。
このことわざは、話すことそのものを悪いとする言葉ではありません。口で述べる立派な考えや自信に、実際の行動や成果が伴わなければ、本当の能力とは認められないという戒めです。言葉よりも、仕事の出来栄えや行動によって実力を示すことの大切さを伝えています。
「口自慢の仕事下手」の使い方




「口自慢の仕事下手」の例文
- 彼は作業を始める前には大きなことを言うが、失敗ばかりで、まさに口自慢の仕事下手だ。
- 料理の知識を得意げに語っていた兄は、包丁を持つと手際が悪く、口自慢の仕事下手だった。
- 口自慢の仕事下手と評されないように、計画を話すだけでなく、まず試作品を完成させた。
- 新しい店長は商売の理想を盛んに述べるものの、店の管理ができず、口自慢の仕事下手と陰で言われた。
- 彼女は何でも簡単にできると言い張ったが、仕事を任せると少しも進まず、口自慢の仕事下手であることが分かった。
- 口自慢の仕事下手では信用を得られないため、彼は言葉よりも確かな成果を示そうと努めた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Henry G. Bohn編『A Hand-book of Proverbs』George Bell and Sons,1875.























