【ことわざ】
暗がりの恥を明るみへ出す
【読み方】
くらがりのはじをあかるみへだす
【意味】
隠しておけば知られずに済む恥を、自ら騒ぎ立てたり荒立てたりして、かえって世間に広めること。


【英語】
・wash your dirty linen in public.(人に知られたくない内輪の問題を公にする)
【類義語】
・日陰の恥を日向へ出す(ひかげのはじをひなたへだす)
【対義語】
・臭い物に蓋をする(くさいものにふたをする)
「暗がりの恥を明るみへ出す」の語源・由来
「暗がりの恥を明るみへ出す」は、暗い所に隠れていた恥を、光の当たる所へわざわざ持ち出す姿にたとえたことわざです。「暗がり」と「明るみ」という反対の場所を並べることで、内輪だけにとどまっていた事柄が世間に知れ渡る様子を、目に浮かぶ形で表しています。
「暗がり」は、もともと光のない暗い場所を指す言葉です。その一方で、古くから「人目につかない所」「人には知らせない内証の事」という意味でも使われました。1711年ごろの浄瑠璃(じょうるり)『薩摩歌』には、「くらがりのあきなひ」という言い方があり、人に知られない取引を表しています。
「明るみ」も、初めは文字どおり、明るい場所を表しました。『柳多留』第五編(1770年・江戸時代中期)には「あかるみへ引ずって出る」という用例があり、暗い場所から明るい場所へ引き出すという具体的な意味で使われています。
その後、「明るみ」は、「表立った所」「公の場」「世間」を表すようになります。『柳多留』第二十三編(1789年・江戸時代後期)には「あかるみへ出されぬもの」という用例があり、世間に出せないもの、公にできないものという意味を示しています。暗い所と明るい所の対照が、秘密と公然の対照へと広がっていったのです。
現在のことわざにつながる古い言い回しは、梅暮里谷峩が著した洒落本(しゃれぼん)『甲子夜話(きのえねやわ)』(1801年・江戸時代後期)に出てきます。この作品は、甲子の夜の吉原を舞台とする四つの話から成り、その一つである「座敷の契話」の会話に、「くらやみの恥をあかるみで」とあります。
この言い方は、人に知られずに済んでいた恥を、表立った場所へ持ち出してしまうことを表しています。続く会話には、当人たちが余計なことをしたため、自分たちの恥をかえって目立たせてしまったという皮肉が込められています。
古い形には、「暗闇の恥を明るみで搔く」もあります。この「搔く」は、「恥をかく」の「かく」で、暗闇なら人目につかずに済む恥を、わざわざ明るい所でかくという意味です。また、「日陰の恥を日向へ出す」という、日陰と日向を対にした言い方も伝わっています。
表記には、ユーザーが入力した「暗がりの恥を明るみへ出す」のほか、「暗闇の恥を明るみへ出す」があります。「暗がり」と「暗闇」は、どちらも人の目につかない場所や、人に知られていない状態を表すため、ことわざの意味は変わりません。
このことわざの要点は、恥ずかしい事実が偶然知られてしまうことではありません。穏やかに収めれば広まらなかった事柄を、当人が大声で弁解したり、争いを大きくしたりしたために、かえって世間へ知らせてしまうことにあります。暗い所にあった恥を、自分の手で明るい所へ運び出すというたとえが、余計な騒ぎを起こさないよう戒めているのです。
「暗がりの恥を明るみへ出す」の使い方




「暗がりの恥を明るみへ出す」の例文
- 兄弟だけの小さなけんかを近所中に言い触らすのは、暗がりの恥を明るみへ出すようなものだ。
- 誰も気づいていなかった失敗を大声で弁解し、暗がりの恥を明るみへ出す結果となった。
- 家族の内輪もめを細かく公表する彼の行いは、暗がりの恥を明るみへ出すに等しい。
- 社内だけで収まるはずの失言を責め立てたため、暗がりの恥を明るみへ出すことになった。
- 母は、ささいな失敗を自分から言い広めるのは暗がりの恥を明るみへ出すことだと弟を諭した。
- 二人の秘密の言い争いを皆の前へ持ち出せば、暗がりの恥を明るみへ出すだけである。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・学研辞典編集部編『用例でわかる故事ことわざ辞典』学習研究社、2005年。
・高木好次ほか編『洒落本大系 第十巻』林平書店、1931年。
・梅暮里谷峩『甲子夜話』1801年。
・Cambridge University Press, 『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary 第4版』Cambridge University Press,2013.























