【ことわざ】
海の物とも山の物ともつかぬ
【読み方】
うみのものともやまのものともつかぬ
【意味】
物事の正体や素性がはっきりせず、将来どうなるか見当がつかないこと。まだ評価や結果を決められないこと。


【英語】
・hard to predict(予測しにくい)
・up in the air(まだはっきり決まっていない)
・neither fish nor fowl(どちらとも分類しにくいもの)
【類義語】
・海とも山とも知れず(うみともやまともしれず)
・海の物とも川の物ともつかず(うみのものともかわのものともつかず)
【対義語】
・目鼻が付く(めはながつく)
「海の物とも山の物ともつかぬ」の語源・由来
「海の物とも山の物ともつかぬ」は、海でとれる物なのか、山でとれる物なのかさえ分からない、という具体的な対比から生まれたことわざです。そこから、物事の正体・素性・本質がつかめないことを表し、さらに、今後どうなるか見当がつかないことにも用いられるようになりました。
このことわざでは、「海」と「山」が、はっきり異なる二つの領域として並べられています。どちらに属する物か分からないという言い方によって、ただ少し不明であるだけでなく、判断の手がかりそのものが乏しいことを強めて表しています。
近い形の古い用例として、「海とも山とも知れず」があります。この形は『譬喩尽(たとえづくし)』(天明六年、1786年序、江戸時代後期、松葉軒東井編)に出てくる表現で、「海の物とも山の物ともつかず」と同じ意味をもつ言い方として伝わっています。
『譬喩尽』は、ことわざを中心に、詩歌・童謡・流行語・方言などを広く集め、いろは順に配列した諺語辞典です。江戸時代後期には、このように「海」と「山」を対にした言い方が、すでにことわざ類の中で扱われる表現になっていたことが分かります。
また、『諺苑(げんえん)』(1797年成立、江戸時代後期、太田全斎著)にも、「海の物とも山の物ともつかず」にあたる形が見えます。『諺苑』は俗語・俗諺を集めた国語辞書で、そこでは「山」のほかに「川」を置く形や、「つかず」「知れず」の形もあわせて示されています。
このことから、古くは「海とも山とも知れず」「海の物とも山の物ともつかず」「海の物とも川の物ともつかず」のように、いくつかの近い言い方が並んで用いられていたといえます。いずれも、物事をどちらとも決められず、正体や行く末をつかめないことを表す点で共通しています。
近代の用例では、徳田秋声の『新世帯』(1908年、明治時代)に「まだ海のものとも山のものとも知れねいんだからね」という形が出てきます。ここでは、生活や仕事の見通しがまだ立たず、先の判断ができない場面で使われています。
さらに、升田幸三の『名人に香車を引いた男』(1980年、昭和時代)には、若い自分を指して「海のものとも山のものとも知れん私」と述べる用例があります。これは、人の将来性や力量がまだはっきりしない段階を表す使い方です。
現在の「海の物とも山の物ともつかぬ」は、物の正体だけでなく、人物・商売・計画・研究などの先行きをいう場合にも広く使われます。もとの「どちらの物か分からない」という具体的な比喩が、「評価や結果をまだ決められない」という意味へ広がったことわざです。
「海の物とも山の物ともつかぬ」の使い方




「海の物とも山の物ともつかぬ」の例文
- 始まったばかりの店なので、海の物とも山の物ともつかぬ段階だ。
- 新人選手は才能を感じさせるが、まだ海の物とも山の物ともつかぬ。
- 新しい計画は面白そうだが、利益が出るかどうかは海の物とも山の物ともつかぬ。
- 研究の成果は、今のところ海の物とも山の物ともつかぬ状態にある。
- その企画は話題になっているものの、成功するかは海の物とも山の物ともつかぬ。
- 引っ越して始める生活は、期待も不安もあり、まだ海の物とも山の物ともつかぬ。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・松葉軒東井編『譬喩尽』1786年序。
・太田全斎『諺苑』1797年。























