【ことわざ】
生みの親より育ての親
【読み方】
うみのおやよりそだてのおや
【意味】
自分を生んだ親よりも、実際に養い育ててくれた親のほうに、深い恩や愛情を感じるということ。育てた親のほうが、その人に大きな影響を与えるという意味でも用いる。


【英語】
・Nurture is more important than nature(生まれつきの関係や性質より、育てられ方が大切である)
【類義語】
・生みの恩より育ての恩(うみのおんよりそだてのおん)
・生んだ子より抱いた子(うんだこよりだいたこ)
【対義語】
・血は水よりも濃い(ちはみずよりもこい)
「生みの親より育ての親」の語源・由来
「生みの親より育ての親」は、「生みの親」と「育ての親」を対にして成り立つことわざです。「生みの親」は、自分を生んでくれた親、または物事を最初に作り出した人を指します。
「育ての親」は、その子どもを実際に養育した親を指します。また、人に限らず、ある物事の育成に力を尽くした人を指す場合もあります。
このことわざでは、子をこの世に生むことと、その子を日々養い育てることとを分けて考えます。血のつながりを軽んじる言葉ではなく、暮らしの中で世話をし、守り、導いてきた時間の重みを強く表します。
「生む/産む」は、子や卵を母体の外に出すことを表します。一方で「育てる」は、生きものが成長していく過程を助け導くことを表し、この二つの言葉の違いが、このことわざの意味の土台になっています。
古い用例として、明治時代の落語「自称情夫」(1897年、四代目橘家円蔵)に、「生みの親より育ての親」という形が出てきます。そこでは、育ててくれた親との関係を強く感じる文脈で、この言い方が用いられています。
この用例から分かるのは、明治時代にはすでに、出産した親と育てた親を比べ、育てた親への恩愛を強く表す言葉として使われていたということです。親子の形が血縁だけで決まるのではなく、実際に養育した関係によって深まるという考えが、短い言葉にまとまっています。
また、「生みの恩より育ての恩」という近い言い方もあります。これは「生みの親より育ての親」と同じ意味で、子を産んだことへの恩よりも、養い育ててくれた恩のほうを重く見る言い方です。
さらに、「生んだ子より抱いた子」という近いことわざもあります。自分が世話をしなかった実子よりも、小さいころから育てた子のほうに愛情が移るという意味で、日々の養育が情を深めるという点で、このことわざとつながります。
昭和後期の文章にも、このことわざは、養子や家庭のあり方を語る文脈で使われています。桐島洋子の『淋しいアメリカ人』(1971年)には、「生みの親より育ての親」という考え方が、広く受け入れられたものとして語られる用例があります。
現在では、親子関係だけでなく、事業、作品、団体、人物の成長を支えた人についても使われます。最初に生み出した人と、長く育て上げた人を分けて見たうえで、育てた人の働きを重く見る表現として定着しています。
「生みの親より育ての親」の使い方




「生みの親より育ての親」の例文
- 彼は養父母に深く感謝し、生みの親より育ての親という言葉を大切にしていた。
- 古い商店街を守ってきた人々を見ると、生みの親より育ての親という考えがよく分かる。
- その劇団は創設者よりも、長年若手を育てた指導者を生みの親より育ての親として慕っている。
- 祖母は血のつながりにこだわらず、生みの親より育ての親の気持ちで孫を育てた。
- 新しい商品を考えたのは別の人だが、販売まで育て上げた担当者こそ生みの親より育ての親と言える。
- 生みの親より育ての親というように、人を育てるには長い時間と深い愛情が必要だ。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・四代目橘家円蔵「自称情夫」1897年。
・桐島洋子『淋しいアメリカ人』文藝春秋、1971年。























