【慣用句】
秋風が立つ
【読み方】
あきかぜがたつ
【意味】
男女の間の愛情が冷め、互いの気持ちが離れていくこと。


「秋風が立つ」の語源・由来
「秋風が立つ」の土台にあるのは、秋になり、涼しい風が吹き始めるという、目にも肌にも分かる季節の変化です。「秋風が立つ」には、まず秋風が吹くという意味があり、そこから、人の心が冷えることを表す言い方へと広がっています。
古い形は、『万葉集(まんようしゅう)』(奈良時代の歌集)の巻十一・二六二六に出てきます。そこには「古衣打棄る人は秋風之立来時にもの思ふものそ」とあり、着古した衣を捨てる人も、秋風が立ち来る時には物思いをする、という歌です。
この歌の「秋風之立来」は、秋風が吹き始め、秋が訪れるという具体的な景色を表す古い用例です。ここでは、季節の移り変わりによって心にさびしさや物思いが生まれる様子が、秋風の立つ時に重ねられています。
その後、「秋風」は、男女の心が冷えることにも結びつくようになります。その仕組みは、「秋」という音に「飽き」を通わせることにあります。季節の秋風が冷たくなることと、相手への愛情が薄らいでゆくこととが、一つの表現の中で重なるようになったのです。
現在の意味に直接つながる古い例は、『評判記・秘伝書(ひょうばんき・ひでんしょ)』(1655年ごろ・江戸時代前期)にあります。「又かへりいけんの事」には、「かならず、さやうの秋風たつときは。いろいろのむりを、いひかくるものなり」と記されています。
この箇所の「秋風たつ」は、男女の間で愛情が薄らぎ、相手への嫌気が生じるという意味で用いられています。つまり、江戸時代前期には、季節の風をいうだけでなく、二人の関係の冷えを表す言い方として文章に現れていました。
形の上では、古い例の「秋風之立来」や「秋風たつ」が、現在の「秋風が立つ」へと続いています。秋の訪れを告げる風の冷たさに、「飽きて心が離れる」という意味が重なり、男女の愛情が冷めることをほのめかす慣用句として用いられるようになりました。
現在では、「二人の間に秋風が立つ」のように、恋人や夫婦などの間で以前のような愛情が保たれなくなったことを、秋の冷たい風にたとえて穏やかに表します。季節の景色と人の心の移ろいとが重なっているところに、この慣用句の趣があります。
「秋風が立つ」の使い方




「秋風が立つ」の例文
- 結婚を約束した二人の間に秋風が立つと、手紙のやり取りも途絶えた。
- 長く仲むつまじかった夫婦の間にも、いつしか秋風が立つことがある。
- 恋人同士の間に秋風が立つのを恐れ、彼は誤解を解くために会いに行った。
- 周囲は、長年連れ添った二人に秋風が立つとは思いもしなかった。
- 婚約して間もない二人の間に秋風が立ったという噂が、親族を心配させた。
- 離れて暮らす日々が続くうちに、あの夫婦の間にも秋風が立つようになった。
主な参考文献
・小学館辞典編集部編『日本語便利辞典』小学館、2004年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。























