【ことわざ】
秋風が立つ
【読み方】
あきかぜがたつ
【意味】
男女の間の愛情が冷め、気持ちが離れていくこと。前のような親しさが失われ、よそよそしい空気が流れること。


【英語】
・fall out of love(恋愛感情が冷める)
・Their love has begun to cool.(二人の愛情が冷めはじめた)
【類義語】
・愛想が尽きる(あいそがつきる)
・ひびが入る(ひびがはいる)
・仲違い(なかたがい)
【対義語】
・相思相愛(そうしそうあい)
・仲睦まじい(なかむつまじい)
・焼け木杭に火が付く(やけぼっくいにひがつく)
「秋風が立つ」の語源・由来
この言い方は、もともと本当に秋の風が吹き始めることを表したものです。まず季節の移り変わりをいうことばがあり、あとから恋のたとえとして広がりました。
古い例としては、『万葉集(まんようしゅう)』に秋風が立ち来るという形の歌があり、8世紀後半(奈良時代)には、秋風が立つという発想そのものがすでに使われていたことが分かります。そこでは今のような恋愛の慣用句ではなく、秋の訪れと、それにつれて深まる物思いが重ねられています。
また、『伊勢物語(いせものがたり)』にも、少し秋風が吹き立ったころに会おう、という趣旨の文が出てきます。10世紀前半(平安時代)には、秋風が吹き始めることを表す言い回しが、すでに広く通じていたと考えてよいでしょう。
そのうえで、和歌の世界では「秋」と「飽き」とを重ねる掛詞(かけことば)が早くから発達しました。平安時代の和歌では、この重ね方が定着しており、恋人の心変わりを「秋」の語ににじませる表現が繰り返し用いられています。
とくに研究では、「あき」に重ねる景物の中でも、秋風がきわめてよく使われることが指摘されています。秋風は、季節の冷えだけでなく、さびしさや約束のむなしさまで運びやすい語だったからです。
こうして、秋風は単なる自然の風景ではなく、恋の終わりをほのめかすしるしにもなっていきました。季節が秋に移る冷たさと、人の心が相手に飽きて離れていく冷たさとが、一つのことばの中で重なるようになったのです。
この段階では、まだ今の慣用句の形がそのまま固まっていたわけではありません。けれども、「秋風」という語が、恋愛の冷え込みを表す下地は、和歌の長い積み重ねの中でしっかり育っていました。
今の形に近い、男女の仲の冷えを表す用法がはっきり確かめられるのは、1655年ごろ(明暦元年ごろ・江戸時代前期)の『評判記・秘伝書(ひょうばんき・ひでんしょ)』です。そこには「秋風たつときは」とあり、愛情が薄らいだ場面をいう言い方として使われています。
これは大事な点です。江戸時代のはじめには、秋風たつが和歌だけのことばではなく、男女の気持ちが離れることを表す、通じやすい言い回しとして文章に残っていたことになるからです。
このことばの力は、「秋」の音が「飽き」と重なることだけではありません。秋風そのものに、暑さのあとの冷え、にぎやかさのあとの静けさ、楽しかった時期が過ぎたあとのさびしさが感じられるため、恋の温度が下がる場面にぴたりと合ったのです。
そのため「秋風が立つ」は、激しい口論や決定的な別れだけをいうとは限りません。前より連絡が減る、ことばがよそよそしくなる、会っても気持ちが通わないといった、関係の冷えはじめを表す言い方としても用いられます。
まとめると、このことばは、古くは季節の秋風をいう語として使われ、その後、和歌で育った「秋」と「飽き」の重なりを受けて、男女の愛情が冷める意味を持つようになりました。季節の冷たさと心の冷たさが一つになって生まれた、日本語らしいたとえだといえます。
「秋風が立つ」の使い方




「秋風が立つ」の例文
- 毎日電話をしていた二人だが、このごろは用事の連絡しかなく、すっかり秋風が立った。
- 結婚の話まで出ていたのに、仕事のすれ違いが続くうちに二人の間に秋風が立った。
- 文化祭の準備で急に親しくなったが、行事が終わるとほどなく秋風が立った。
- 長く交際していた恋人同士にも秋風が立ち、婚約は取りやめになった。
- 同じ店で働く恋人同士だったが、退職の相談をきっかけに秋風が立った。
- 仲のよさで知られていた二人に秋風が立ったと聞き、友人たちはおどろいた。























