【故事成語】
韋編三度絶つ
【読み方】
いへんみたびたつ
【意味】
書物を何度も熱心に読み返すことのたとえ。同じ本を深く読み込み、読書に打ち込む様子をいう。


【英語】
・read and reread a book(本を何度も読み返す)
【類義語】
・韋編三絶(いへんさんぜつ)
・熟読玩味(じゅくどくがんみ)
・読書百遍義自ら見る(どくしょひゃっぺんぎおのずからあらわる)
「韋編三度絶つ」の故事
「韋編三度絶つ」の「韋」は、なめし革を指します。「韋編」は、紙が広く用いられる以前の中国で、竹や木の札を革ひもでつづった書物、またはその革ひもを指す言葉です。
古代中国では、長い文章を細い札に書き、その札をひもでつなげて一つの書物にしました。そのため、同じ書物を何度も広げて読むと、つづっているひもが傷み、ついには切れることがありました。
この故事の中心にいる人物は、春秋時代の思想家で、儒学の祖として知られる孔子です。孔子は魯の国に生まれ、多くの弟子を教え、晩年には古典の整理にも力を注いだ人物として伝えられています。
もとになった話は、『史記』(前漢、紀元前91年ごろ完成、司馬遷著)の「孔子世家」に出てきます。『史記』は、黄帝から前漢の武帝までを扱う紀伝体の歴史書で、全130巻から成ります。
「孔子世家」では、孔子が晩年になって『易』を好んだことが語られます。『易経(えききょう)』は、のちに儒教の五経の一つとされ、六十四卦によって自然や人生の変化の道理を説く書物です。
原文には、「孔子晚而喜《易》……讀易,韋編三絕」とあります。これは、孔子が晩年に『易』を好み、読み返すうちに、書物をつづる革ひもが三度も切れた、という意味です。
ここで大切なのは、孔子が一度読んで終わりにしたのではなく、同じ書物を何度も開き、深く考えながら読み続けた点です。革ひもが三度切れるという具体的な描写によって、読書に注ぐ熱心さが強く表されています。
原形に近い言い方としては、「韋編三絶」があります。「三絶」は三度切れることを表し、「韋編三絶」は、何度も読んだために書物がぼろぼろになることをいう表現として用いられます。
日本語では、「韋編三絶」という漢語形と、「韋編三度絶つ」「韋編三たび絶つ」という読み下し形が用いられてきました。「韋編三絶」は『空華日用工夫略集』(永徳元年・1381年、室町時代)の用例が古く、「韋編三度絶つ」は『文明本節用集』(室町時代中期)の用例として伝わります。
後の時代にも、この表現は、愛読書や大切な書物を何度も読み込むことをいう言葉として使われました。近現代の文章にも、「韋編三絶」や「韋編三たび絶つ」の形が出てきます。
そのため、「韋編三度絶つ」は、単に努力家であること全般をいう表現ではありません。もとの故事に即していえば、書物をくり返し読み、内容を深く受け止めようとする読書の熱心さを表す言葉です。
現在では、古典、専門書、愛読書などを何度も読み返し、身につけようとする場合に使われます。孔子が『易』をくり返し読んだ故事から、深く読むことの積み重ねをたたえる表現として受け継がれています。
「韋編三度絶つ」の使い方


健太くんはいつもその本を持ち歩いて一生懸命に読んでいるよね。

まさに韋編三度絶つの精神だね。

私も健太くんに負けないくらい、お気に入りの図鑑を何度も読み込んでみるね!
「韋編三度絶つ」の例文
- 祖父は若いころから同じ歴史書を読み返し、韋編三度絶つほど内容を身につけた。
- 研究者は一冊の古典を韋編三度絶つまで読み込み、細かな語句の違いまで確かめた。
- 受験のために参考書をただ増やすより、良書を韋編三度絶つように読むほうが力になる。
- 彼女は詩集を韋編三度絶つほど愛読し、好きな詩を自然に暗唱できるようになった。
- その先生は、韋編三度絶つほど読んだ本だけを、授業で深く語ることができた。
- 難しい哲学書も、韋編三度絶つつもりで読み返せば、少しずつ筋道が分かってくる。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・飯間浩明編『四字熟語を知る辞典』小学館、2018年。
・小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。
・司馬遷『史記』前漢、紀元前91年ごろ。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』Cambridge University Press。























