【ことわざ】
鵜の真似をする烏
【読み方】
うのまねをするからす
【意味】
自分の能力や身の程を考えずに人のまねをして、失敗することのたとえ。似ているだけで同じことができると思いこむ危うさを戒める言葉。


【英語】
・Know your limitations(自分の限界を知れ)
・Don’t try to run before you can walk(基本が身につく前に難しいことをしようとするな)
【類義語】
・烏が鵜の真似(からすがうのまね)
・鵜の真似する烏(うのまねするからす)
・猿真似(さるまね)
・身の程知らず(みのほどしらず)
「鵜の真似をする烏」の語源・由来
「鵜の真似をする烏」は、鵜と烏がどちらも黒い鳥として見られることから生まれたことわざです。鵜は水にもぐって魚を捕る鳥であり、烏は同じような色に見えても、その働きまで同じではない、という対比がもとになっています。
「烏」は、カラス科の鳥を指し、漢字としては「からす」「黒い」などの意味をもちます。全身が黒く見える鳥という点で、鵜との見かけの近さが、このことわざのたとえを分かりやすくしています。
一方、鵜は水辺で魚を捕る鳥として知られます。カワウは水面で潜水して魚を採食し、ウミウも姿のよく似た鳥として鵜飼に用いられてきました。
このことわざの根底には、「姿が似ている」ことと「能力が同じである」ことを取り違える危うさがあります。烏が鵜のまねをして水に入っても、魚を捕れないばかりか、溺れてしまうという筋立てが、身の程を知らないまねの失敗を表しています。
古い用例として、『十訓抄』(1252年・鎌倉時代中期、編者未詳)に「鵜のまねする烏」の形が出てきます。『十訓抄』は年少者に向けて、思慮や勘忍などの教えを説話で示した教訓的な説話集です。
その用例には、「打任せたる習ひとたのまん事、鵜のまねする烏に似たり」とあります。これは、深く考えずに、いつものやり方や他人のふるまいに頼ることを戒める文脈で、このことわざが早くから教訓として使われていたことを示します。
鎌倉時代後期の私撰和歌集『夫木和歌抄』(1310年ごろ、藤原長清撰)にも、近い形が出てきます。そこには「山烏うのまねすともうをはとらじな」という趣旨の歌が収められ、山烏が鵜のまねをしても魚は取れない、という見立てが詠まれています。
この段階では、「鵜のまねする烏」「烏が鵜の真似」のように、言い回しの順序や助詞に揺れがありました。現在よく見る「鵜の真似をする烏」は、その内容を分かりやすく整えた形として定着したものです。
また、「鵜の真似する烏は水を呑む」という異形もあります。これは、水にもぐって魚を捕るどころか水を呑むだけになる、という失敗の結果をさらに具体的に言い足した言い方です。
のちには「鵜の真似」だけでも、同じことわざを指す場合がありました。ただし「鵜の真似」には、鵜のように物を丸のみにすることや、水中にもぐることを表す用法もあるため、教訓の意味では「烏」まで添えた形のほうが誤解されにくい言い方です。
このことわざが伝えているのは、他人をまねること自体をすべて否定する考えではありません。まねる相手の力、置かれた条件、自分の実力を見ずに、形だけをまねると失敗する、という戒めです。
そのため、現在では、勉強、スポーツ、仕事、習い事などで、上手な人のやり方を形だけ取り入れて失敗しそうな場面に使います。見かけの似通いに安心せず、自分に合った力のつけ方を考える大切さを教えることわざです。
「鵜の真似をする烏」の使い方




「鵜の真似をする烏」の例文
- 名人の手つきだけをまねて失敗するとは、鵜の真似をする烏そのものだ。
- 基礎を学ばずに上級者の方法だけを取り入れれば、鵜の真似をする烏になりかねない。
- 有名店の外見だけをまねても味が伴わず、鵜の真似をする烏と評された。
- 友人の勉強法を自分に合うか考えずにまねた結果、鵜の真似をする烏になった。
- 経験のない仕事で専門家のふるまいだけをまねるのは、鵜の真似をする烏である。
- 鵜の真似をする烏にならないよう、まず自分の力に合った練習から始めるべきだ。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』。
・『十訓抄』1252年。
・藤原長清撰『夫木和歌抄』1310年ごろ。
・Pearson Education Limited『Longman Dictionary of Contemporary English Online』。























