【ことわざ】
当たるも八卦、当たらぬも八卦
【読み方】
あたるもはっけ、あたらぬもはっけ
【意味】
占いは当たることもあれば外れることもあり、必ずしも的中するとは限らないという意味。


【英語】
・Fortune-telling does not always come true.(占いはいつも当たるとは限らない)
【類義語】
・合うも不思議合わぬも不思議(あうもふしぎ、あわぬもふしぎ)
【対義語】
・百発百中(ひゃっぱつひゃくちゅう)
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の語源・由来
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の中心にある「八卦(はっけ)」は、もともと中国古代の占いである易(えき)に関わる言葉です。易では、陰と陽を示す爻(こう)を三本組み合わせて八つの形を作り、さらにそれらを重ねて六十四の卦を立て、人の行動や物事の吉凶を判断します。
易の占いでは、算木(さんぎ)や筮竹(ぜいちく)などを使い、そこに表れた卦をもとに自然や人事の吉凶を読み取ります。このため「八卦」は、もとの専門的な意味では易の基本となる八つの形を指しますが、日常の言葉の中では、しだいに易や人相見(にんそうみ)・手相見(てそうみ)などの占いを広く指す言葉としても使われるようになりました。
このことわざは、占いの結果を絶対のものとして受け止めるのではなく、「当たることもあれば、外れることもある」と見る考え方を短く言い表しています。「当たる」と「当たらぬ」を対にして並べることで、占いには的中と外れの両方があることを、軽く受け流すような調子で示しています。
古い用例として、江戸時代後期の人情本『四季眺望恩愛二葉艸(しきのながめ おんあいふたばぐさ)』(天保5年・1834年序、鼻山人作)に、「何程(なんぼ)見通しの法印さんでも、ハテ中(アタ)るも八卦、中(アタ)らぬも八卦だ」とあります。ここでは、よく見通せるとされる人の判断であっても、占いは当たることも外れることもある、という受け止め方が表れています。
この用例では「当たる」ではなく「中(アタ)る」という表記が使われています。「中る」は的に当たる、つまり的中する意味を強く感じさせる表記で、占いの結果が当たるか外れるかをいう場面によく合います。現代では、一般に読みやすい「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の形で広く用いられています。
近代の用例では、永井荷風『つゆのあとさき』(昭和6年、1931年)に、凶の卦に当たってもあまり気にしすぎないほうがよい、という流れでこのことわざが出てきます。悪い占いを見た人をなだめたり、占いの結果だけで心を乱さないように促したりする使い方が、近代にも自然に続いていたことが分かります。
つまり、このことわざは、易の「八卦」という古い占いの言葉を土台にしながら、占い一般へのほどよい距離の取り方を表す言葉として定着しました。占いをまったく否定するのではなく、当たることも外れることもあるものとして受け止め、最後は自分の判断や行動を大切にする、という穏やかな教訓を含んでいます。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の使い方




「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の例文
- 朝の占いで悪い順位だったが、当たるも八卦、当たらぬも八卦と考えて、ふだんどおり試合に向かった。
- 旅行の日の天気占いを気にしすぎず、当たるも八卦、当たらぬも八卦として雨具だけ用意した。
- 手相で将来を言い当てられて驚いたが、当たるも八卦、当たらぬも八卦なので、進路は自分で考えた。
- 友人はおみくじの凶に落ちこんだが、当たるも八卦、当たらぬも八卦と母に励まされた。
- 新商品の売れ行きを占いで決めるわけにはいかず、当たるも八卦、当たらぬも八卦として市場調査を重んじた。
- 占い師の言葉が偶然当たっても、当たるも八卦、当たらぬも八卦という気持ちを忘れない。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・鼻山人『四季眺望恩愛二葉艸』1834年。
・永井荷風『つゆのあとさき』1931年。























