【ことわざ】
一の裏は六
【読み方】
いちのうらはろく
【意味】
悪いことのあとには良いことがあり、良いことと悪いことはめぐり合わせの中で入れかわるということ。


【英語】
・Every cloud has a silver lining(悪い状況にも、よい可能性がある)
【類義語】
・沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり(しずむせあればうかぶせあり)
・苦あれば楽あり(くあればらくあり)
・禍福は糾える縄の如し(かふくはあざなえるなわのごとし)
【対義語】
・泣き面に蜂(なきつらにはち)
・弱り目に祟り目(よわりめにたたりめ)
「一の裏は六」の語源・由来
「一の裏は六」は、さいころの目のつくりから生まれたことわざです。さいころでは、「一」の反対側に「六」があります。いちばん小さい目の裏に、いちばん大きい目があるという形から、悪いことの裏には良いことがあり、物事は一方だけでは終わらない、という考えを表すようになりました。
このことわざの古い実例として、『竹斎(ちくさい)』(1621〜1623年・江戸時代初期、富山道冶作)上に、「一のうらは六、悪の裏は善也」とあります。『竹斎』は、やぶ医者の竹斎が下僕にらみの介を連れて、京から江戸へ下る道中をこっけいに描いた仮名草子です。ここでは「一のうらは六」というさいころのたとえを、「悪の裏は善也」と受けて、悪いことの後ろには善いこともある、という意味にほどいています。
古い用例では「一のうらは六」と、ひらがなを交えた形で書かれています。現在は「一の裏は六」と表すのが一般的ですが、言葉の骨組みは変わっていません。表に出た目が「一」であっても、その反対側には「六」があるという、目に見える具体的な事実から、人の暮らしの幸不幸を考えるたとえへ広がった表現です。
このことわざが大切にしているのは、「悪いことが起きたら、必ずすぐ良いことが起きる」と決めつけることではありません。生きていくうちには、良いことも悪いこともあり、それらはめぐり合わせの中で循環するものだ、という見方です。そのため、失敗や不運のただ中にいる人に対して、「今の悪い流れだけがすべてではない」と励ます言葉として使われます。
さいころの「一」と「六」は、表と裏の関係にあります。この分かりやすい対比が、善悪や幸不幸の入れかわりを表すのにふさわしかったため、江戸時代初期の文学にも出てくるほど早くから、世のめぐり合わせを言い表すことわざとして用いられてきました。現在の「一の裏は六」も、その流れを受けて、悪いことのあとには良いこともあるという、落ち着いた励ましの意味で受け継がれています。
「一の裏は六」の使い方




「一の裏は六」の例文
- 大会で予選落ちしたが、その反省から練習方法を見直せたので、一の裏は六と思うことにした。
- 旅行の日に雨が降ったが、人が少なくて美術館をゆっくり見られ、一の裏は六の一日になった。
- 店の新商品は売れなかったが、客の意見を集めるきっかけになり、一の裏は六だった。
- 転校して最初は友だちができず不安だったが、読書クラブで気の合う仲間に出会い、一の裏は六を実感した。
- 仕事で失敗したあと、先輩から大切な助言をもらい、一の裏は六という言葉が身にしみた。
- 大事な発表でうまく話せなかったが、その悔しさで次の準備に力が入り、一の裏は六となった。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・富山道冶『竹斎』1621〜1623年。
・Cambridge University Press, Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus.























