【悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らず】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らず

【故事成語】
悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らず

【読み方】
あくいあくしょくをはずるものは、いまだともにはかるにたらず

【意味】
学問や正しい道を志しながら、粗末な衣服や粗末な食事を恥じるような者は、まだ大事な道理をともに語り合う相手にはならない、という戒め。

ことわざ博士
「悪衣」は粗末な衣服、「悪食」はこの句では粗末な食物を指すんだよ。
助手ねこ
この故事成語は、志を持つ者が外見や食事の粗末さに心を奪われる場面で用いるニャン。

【英語】
・not fit to be discoursed with.(ともに論じるに足りない)

【類義語】
・箪食瓢飲(たんしひょういん)
・貧楽(ひんらく)

【対義語】
・衣食足りて礼節を知る(いしょくたりてれいせつをしる)

「悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らず」の故事

故事成語を深掘り

この故事成語は、『論語(ろんご)』里仁第四の一章にもとづく言葉です。『論語』は、孔子没後、門人による孔子の言行記録を儒家の一派が編集した中国の思想書で、二十編から成ります。

もとの文は「子曰、士志於道、而恥惡衣惡食者、未足與議也。」です。現代の形では、その後半を訓読して、「悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らず」と表します。

ここでいう「士」は、単なる身分名だけではなく、道を志し、学問や修養に向かう人を指します。「道」は、人として正しく生きる筋道や、学ぶべき大切な道理を含む言葉です。

「悪衣」は、汚れた衣服、または粗末な衣服を指します。「悪食」は、単独では「あくじき」とも読みますが、この句では「悪衣悪食」を「あくいあくしょく」と読み、粗末な食物という意味で用いられています。

孔子の言葉の要点は、道を志すと言いながら、身なりや食事の見ばえを恥じるようでは、志が十分に定まっていないということです。粗末な衣食そのものをよいものとしてほめるのではなく、学びや道理よりも外見を気にする心を戒めています。

原文の「與」は、現代の日本語表記では「与」と書かれます。「議」は「議する」とも読めますが、この句では「議る」と訓じ、道について語り合う、論じ合うという意味で受け止められてきました。

日本語の語としては、室町時代中期の『文明本節用集』に「耻二悪衣(アクイ)悪食一」という形が出てきます。これは、『論語』の語句が日本の語彙や学習の中にも取り込まれていた古い例といえます。

後の注釈でも、この章句は志の強さを問う言葉として読まれてきました。『論語義疏(ろんごぎそ)』には、道に志そうとしながら悪衣悪食を恥じる者は志のない人であり、ともに道を相談するに足りないという趣旨が記されています。

また、『論語注疏』では、善い道を志していても、衣服や飲食の華やかさを好み、その粗末さを恥じるなら、道を志す心が深くないと解いています。ここでは、生活の貧しさよりも、心の向きが問題にされています。

南宋の朱熹による『論語集注(ろんごしっちゅう)』でも、この章句は、道を求める心と衣食へのこだわりを対比して読まれます。人より衣食が劣ることを恥じる心は、志や見識の浅さを示すものとして理解されています。

このように、「悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らず」は、粗末な暮らしを強いる言葉ではありません。志を立てる者は、見た目やぜいたくに心を奪われず、何を大切にして生きるのかを見失ってはならない、という教えとして伝わっています。

「悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らず」の使い方

健太
学級委員の話し合いで、ぼくたちは節電の係をやりたいって言ったのに、新しいジャンパーじゃないと目立っていやだって言う子がいたよ。
ともこ
活動の中身より見た目を気にしているなら、悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らずって言いたくなるね。
健太
うん。みんなのために何をするかを決める話なのに、服の古さばかり気にしていたら進まないよ!
ともこ
まずは係の目的をもう一度たしかめよう。できることからきちんと決めれば、服より大切なことが見えてくるよ。

「悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らず」の例文

例文
  • 研究の目的より研究室の見栄えを気にする態度は、悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らずという戒めに当たる。
  • 地域のために働くと言いながら、作業着が古いことを恥じるだけなら、悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らずである。
  • 志望校で学びたい内容より制服の見ばえを第一にする考え方は、悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らずと評される。
  • 会社の理念を語る場で待遇の華やかさばかりを気にする姿勢には、悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らずという言葉が重なる。
  • 災害支援の現場で道具の古さを恥じて動かない人には、悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らずという教えが響く。
  • 学問を志す者が机や服装の立派さだけを気にするなら、悪衣悪食を恥ずる者は、未だ与に議るに足らずというべきだ。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・『論語』。
・皇侃『論語義疏』。
・朱熹『論語集注』南宋。




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