【汗出でて背を沾す】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

汗出でて背を沾す

【故事成語】
汗出でて背を沾す

【読み方】
あせいでてはいをうるおす

【意味】
ひどく恥じ入って、冷や汗をかくほどつらく感じること。自分の不十分さや失態を強く恥じるさま。

ことわざ博士
汗出でて背を沾すは、汗が出て背中までぬれるほどの恥ずかしさを表す故事成語なんだよ。
助手ねこ
人前で答えられなかったり、自分の力不足を思い知らされたりした場面で用いるニャン。

【英語】
・in a cold sweat.(恐れ・不安・恥ずかしさなどで冷や汗をかいている)
・break out in a cold sweat.(恐れ・不安・恥ずかしさなどで急に冷や汗をかく)

【類義語】
・冷汗三斗(れいかんさんと)
・汗顔(かんがん)
・面目無い(めんぼくない)

【対義語】
・厚顔無恥(こうがんむち)

「汗出でて背を沾す」の故事

故事成語を深掘り

「汗出でて背を沾す」は、中国前漢の歴史家・司馬遷が著した『史記』の「陳丞相世家」にもとづく故事成語です。『史記』は、古代の黄帝から前漢の武帝までを、本紀・表・書・世家・列伝の形式でまとめた歴史書で、紀元前104年前後から編纂が始まり、紀元前91年ごろには草稿が整ったと考えられています。

この故事の場面は、漢の文帝が即位してから、国家の政務をしだいに詳しく知るようになったころに始まります。文帝は右丞相となった周勃に、天下で一年に裁かれる訴訟の数をたずねますが、周勃は「不知」と答え、さらに一年の銭穀の出入りを問われても、やはり答えられませんでした。

そのときの周勃の様子について、原文には「汗出沾背,愧不能對」とあります。汗が出て背をぬらし、答えることができないのを恥じたという意味で、ここから「汗出でて背を沾す」は、単に暑さで汗をかくことではなく、恥や恐れで冷や汗を流すほど追いつめられた状態を表す言い方になりました。

続いて、文帝は左丞相の陳平にも尋ねます。陳平は、裁判のことは廷尉、銭穀のことは治粟内史に問うべきであり、宰相の役目は、天子を助け、時節を順にし、万物を育て、諸侯や百姓を安んじ、卿大夫にそれぞれの職を果たさせることだと答えました。

この対比が、故事の中心です。周勃は呂氏の乱を平定する大きな功績をもつ人物でしたが、軍事の功績だけでは、宰相として何を知り、何を担うべきかを十分に理解したことにはなりませんでした。

そのため、この故事の恥は、ただ答えを知らなかった恥ではありません。高い地位にありながら、その職務の本質をつかんでいなかったことに気づかされた恥として描かれています。

朝廷を出たあと、周勃は陳平に、前もって答え方を教えてくれなかったと責めます。陳平は、自分の地位にありながらその任務を知らないのかと笑い、文帝が長安の盗賊の数を尋ねたなら、無理に答えるつもりだったのかと返しました。

このやりとりのあと、周勃は陳平の力に遠く及ばないことを知り、しばらくして病を理由に宰相を辞しています。つまり、「汗出でて背を沾す」は、人前で恥をかくという表面だけでなく、自分の役目を深く反省するところまで含んだ故事成語といえます。

明治初期の『布令字弁(ふれいじべん)』(1868〜1872年刊、知足蹄原子編)には、同じ出典にもとづく「汗背」という言葉が入り、「恥じて、背中に汗をかくこと」を表しています。漢文の「汗出沾背」が、短く「汗背」ともまとめられ、日本語の漢語として受け入れられていたことを示しています。

また、同じ故事の「汗出沾背」は、漢語圏では「汗流浹背」「汗流洽背」などの形へ広がりました。これらは恥じ入ることや驚き恐れることを表すだけでなく、後には仕事のつらさや暑さで汗を多くかく意味にも用いられますが、日本語の「汗出でて背を沾す」は、もとの故事に近く、深く恥じ入る意味を中心に使うのが自然です。

「汗出でて背を沾す」の使い方

健太
昨日の委員会で、ぼくは図書当番の表を作る約束をしていたのに、すっかり忘れていたよ。
ともこ
先生に聞かれたとき、何も答えられなくて困っていたね。みんなが待っていたから、つらかったでしょう?
健太
うん、汗出でて背を沾す思いだった……。係として何をするべきか、ちゃんと分かっていなかったんだ。
ともこ
今日の放課後にいっしょに作り直そう。次は、自分の役目をメモしておけば大丈夫だよ。

「汗出でて背を沾す」の例文

例文
  • 学級委員として会議の内容を尋ねられたが、何も答えられず、汗出でて背を沾す思いをした。
  • 準備不足のまま発表に立ち、質問に詰まって、汗出でて背を沾すことになった。
  • 約束した仕事を忘れていたことを上司に指摘され、汗出でて背を沾すほど恥じ入った。
  • 大事な資料の確認を怠っていたと分かり、担当者は汗出でて背を沾す思いで謝った。
  • 友人の忠告を軽く見て失敗し、あとから汗出でて背を沾すような気持ちになった。
  • 集まりの代表なのに予定を把握しておらず、皆の前で汗出でて背を沾す思いを味わった。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・飯間浩明編『四字熟語を知る辞典』小学館、2018年。
・Collins Dictionaries『Collins Easy Learning English Idioms』Collins、2010年。
・知足蹄原子編『布令字弁』1868〜1872年。
・司馬遷『史記』紀元前1世紀ごろ。
・中華民国教育部『成語典』。




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