【ことわざ】
一瓜実に二丸顔
【読み方】
いちうりざねににまるがお
【意味】
かつて女性の顔立ちについて、瓜実顔を第一、丸顔を第二によいとした言い方。古い美意識にもとづく顔立ちの順位づけを表す。


【英語】
・an oval face(瓜実顔に近い卵形の顔)
【類義語】
・色の白いは七難隠す(いろのしろいはしちなんかくす)
・髪の長きは七難隠す(かみのながきはしちなんかくす)
【対義語】
・見目より心(みめよりこころ)
・人は見かけによらぬもの(ひとはみかけによらぬもの)
「一瓜実に二丸顔」の語源・由来
このことわざは、昔の日本で女性の顔立ちを語るときに用いられた、美人観を表す数え上げの言い方です。「一」は第一にすぐれるもの、「二」はその次によいものを表し、「瓜実」と「丸顔」を並べて、顔の形を順に評価しています。
「瓜実」は、もともと瓜の種を指す言葉です。『色葉字類抄(いろはじるいしょう)』(平安時代末期、橘忠兼著)には、瓜の種の意味で「瓜実」が出てきます。のちに、その形が人の顔の輪郭にたとえられ、「瓜実顔」の略としても使われるようになりました。
顔立ちを表す語としては、「瓜実形」という言い方も早くから用いられました。『日葡辞書(にっぽじしょ)』(1603〜1604年、日本イエズス会宣教師編)には、瓜の種のような形を表す語として「瓜実形」が出てきます。また、『鷹筑波集(たかつくばしゅう)』(1642年・江戸時代前期、西武編)には、「瓜さねなりの窂人(らうにん)のかほ」という句があり、顔の形を瓜の種にたとえる発想が、江戸時代前期の俳諧にも入っていたことが分かります。
「瓜実顔」という形では、『毛吹草追加(けふきぐさついか)』(1647年・江戸時代前期、松江重頼編)上に、「姫瓜や瓜さね㒵(がほ)につくり眉〈満成〉」という用例が出ています。これは、姫瓜と「瓜さね顔」とを取り合わせた句で、瓜の種に似た顔立ちが、すでに美しく整った顔の形として意識されていたことを示しています。
さらに、江戸時代の評判記『秘伝書』(1655年ごろ)には、「かほなりは、うりざね、ゆずりはなりといふ」とあります。ここでは「瓜実」が、単に植物の種ではなく、顔の形を分類していう言葉として用いられています。こうした用例から、瓜実顔は江戸時代前期には人の容貌を語る言葉として定着していたといえます。
対象語の形は、「一瓜実二丸顔三平面に四馬面」という長い形でも伝わっています。この長い形では、瓜実顔、丸顔、平面、馬面という顔立ちを順に並べています。後には「三平顔に四長顔、五まで下がった馬面顔」や「三平顔に四長面」などと続ける形もあり、三以降は難点を並べるものが多いとされます。
つまり、「一瓜実に二丸顔」は、まず「瓜実顔」という顔立ちの形容が古くから美人の一典型として使われ、その後、丸顔などと比べる数え上げの言い方として整ったことわざです。ただし、これは昔の社会における容姿の見方を反映した言葉であり、現代の人をそのまま評価する言葉として使うと、相手を傷つけるおそれがあります。現在では、昔の美人観やことわざの歴史を説明するときに用いるのがふさわしい表現です。
「一瓜実に二丸顔」の使い方




「一瓜実に二丸顔」の例文
- 一瓜実に二丸顔は、昔の日本で好まれた女性の顔立ちを表すことわざ。
- 江戸時代の美人画を説明する授業で、一瓜実に二丸顔という言葉が紹介された。
- 一瓜実に二丸顔から、当時は瓜実顔が美人の一典型と考えられていたことが分かる。
- 一瓜実に二丸顔は、現代の人を評価する言葉として使うより、昔の美意識を知るための言葉として扱うのがよい。
- 祖母は古いことわざとして一瓜実に二丸顔を知っていたが、人の顔を比べる言い方には気をつけていた。
- 一瓜実に二丸顔という表現を学ぶと、ことわざには時代ごとの価値観が映ることが分かる。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・橘忠兼『色葉字類抄』1144〜1181年ごろ。
・日本イエズス会宣教師編『日葡辞書』1603〜1604年。
・西武編『鷹筑波集』1642年。
・松江重頼編『毛吹草追加』1647年。























