【ことわざ】
裏には裏がある
【読み方】
うらにはうらがある
【意味】
世間の事柄や人の心は複雑で、表面だけを見ても真相をつかめないこと。内情が入り組んでいて、簡単には判断できないこと。


【英語】
・There is more to it than meets the eye(見た目以上に複雑な事情がある)
【類義語】
・底もあり蓋もあり(そこもありふたもあり)
・一筋縄では行かない(ひとすじなわではいかない)
【対義語】
・一目瞭然(いちもくりょうぜん)
・明明白白(めいめいはくはく)
「裏には裏がある」の語源・由来
「裏には裏がある」は、「裏」という言葉を重ねることで、表からは分からない事情の奥に、さらに別の事情があることを表したことわざです。「裏」は、物の裏側だけでなく、物事の表面に現れないところ、外からは簡単にうかがえない部分、内情や内幕を指す言葉として使われてきました。
このことわざの「裏」は、紙や布の裏面という具体的な意味だけを指すのではありません。表向きには見えない理由、隠された意図、言葉や行動の奥にある事情を指しています。
「表」は、物の表面や外見、また、表向きのことを表す言葉です。したがって、「表」と「裏」の対比は、外から見える姿と、その奥にある本当の事情との対比として理解できます。
「裏には裏がある」という形では、まず一つの「裏」が、表面には現れない事情を示します。さらに、その「裏」にもまた「裏」があるということで、事情が一段深く、単純には見抜けないことを強めて表しています。
古い用例としては、小林多喜二の『不在地主』(1929年・昭和4年)に、「表面如何にもっともらしく装ってゐても、裏には裏のあること」とあります。ここでは、もっともらしく見える表向きの説明の背後に、さらに隠れた意図や仕組みがあることを述べています。
『不在地主』は、小林多喜二が昭和4年に発表した小説です。作品の初出は、1929年の「中央公論」と「戦記」であり、社会の仕組みや権力の働きを、表面だけでなく奥の事情まで描こうとする文脈の中で、この言い方が使われています。
この用例では、「裏には裏のあること」という形で出てきます。現在よく使われる「裏には裏がある」と少し形は違いますが、表に見える説明の背後にさらに深い事情がある、という意味は同じです。
「裏」の古い用法には、物事の表面に現れないところ、隠れているところを表すものがあります。近世の文献にも、言葉の裏に何かがあるという形の用例があり、「裏」は早くから、外から見えない心中や事情を表す言葉として使われてきました。
その流れを受けて、「裏には裏がある」は、単に「隠し事がある」というだけでなく、見えたと思った事情のさらに奥にも、別の事情が入り組んでいることをいう表現になりました。物事を一面的に決めつけてはいけない、という慎重な見方を含んでいます。
現在では、人間関係、仕事上の交渉、事件の背景、うわさの真相などについて使われます。表向きの説明を聞いただけで結論を出さず、その奥にある事情を見極める必要があるときに、このことわざがよく当てはまります。
「裏には裏がある」の使い方




「裏には裏がある」の例文
- 急な計画変更には、裏には裏があると考えて、理由をよく確かめた。
- 表向きは単なる値下げに見えたが、裏には裏があるようだった。
- その人の発言だけを聞いて判断せず、裏には裏があることを忘れてはならない。
- 会社どうしの交渉は複雑で、裏には裏がある場合が多い。
- うわさ話は表面だけでは分からず、裏には裏があるものだ。
- 事件の説明は簡単に見えたが、調べるほど裏には裏があると分かった。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小林多喜二『不在地主』1929年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』。
・Merriam-Webster, Incorporated『Merriam-Webster.com Dictionary』。























