【故事成語】
老いてはますます壮んなるべし
【読み方】
おいてはますますさかんなるべし
【意味】
年老いても衰えず、意気は若者をしのぐほど盛んでなければならないということ。


【英語】
・old but vigorous(年を重ねても元気で意気盛んな)
・hale and hearty despite the years(年を重ねても丈夫で元気な)
【類義語】
・矍鑠(かくしゃく)
・老驥櫪に伏すとも、志千里に在り(ろうきれきにふすとも、こころざしせんりにあり)
【対義語】
・老衰(ろうすい)
「老いてはますます壮んなるべし」の故事
「老いてはますます壮んなるべし」は、中国の歴史書『後漢書』(ごかんじょ)「馬援列伝」に出てくる「老當益壯」という言葉に基づく故事成語です。『後漢書』は、後漢一代の歴史を記した中国の正史で、本紀十巻・列伝八十巻は南朝宋の范曄(はんよう)が撰したものです。
もとの言葉は、「丈夫為志,窮當益堅,老當益壯」です。これは、大丈夫が志を立てるなら、困窮したときにはますます堅くあり、年老いたときにはますます盛んであるべきだ、という意味です。
この言葉を述べた人物は、後漢初期の武将である馬援(ばえん)です。馬援は前14年に生まれ、後49年に没した人物で、後に光武帝に仕え、辺境の平定などで功績を立てました。
『後漢書』「馬援列伝」では、馬援は十二歳で父を失い、若いころから大きな志をもっていた人物として描かれています。学問を形式的に守るだけでは満足せず、辺境へ出て田畑や牧畜にかかわりたいと考えたことも記されています。
その後、馬援は郡の役人として囚人を護送する仕事に就きましたが、重罪の囚人をあわれに思って逃がし、自分も北方へ逃れました。赦免を受けた後も、その地に残って牧畜を営み、多くの客人や従う人々を集めました。
そのころ、馬援が客人たちに語った言葉が、「窮當益堅,老當益壯」でした。苦しい境遇にあるほど志を固くし、年を取ったなら、かえって気力を盛んにしなければならない、という生き方を表しています。
ここでいう「壯」は、単に体が強いというだけでなく、志や気力が盛んであることを含みます。そのため、この故事成語は、年齢を理由に気持ちを弱めるのではなく、年を重ねても志を高く保つ教えとして受け取られてきました。
馬援の生涯そのものも、この言葉に重なります。馬援は後に後漢に仕え、伏波将軍となり、交趾の討伐などで功を立て、さらに六十二歳のときにも出陣を願い出ました。
そのとき光武帝は、馬援の年齢を心配し、初めは出陣を許そうとしませんでした。馬援は「臣尚能被甲上馬」と述べ、まだ鎧を着て馬に乗ることができると示し、実際に鞍にまたがって自分が役に立てることを見せました。
この姿を見た光武帝は、「矍鑠哉是翁也」と笑って言いました。これは、この老人はなんと元気で盛んなことか、という意味で、馬援が老いてもなお強い気力を保っていたことを伝えています。
「老當益壯」は、のちに年齢を重ねても身体が強く、志も盛んなさまを表す成語として用いられるようになりました。唐の王勃「滕王閣序」にも「老當益壯,寧移白首之心」とあり、白髪の年齢になっても志を変えない心を表す言葉として受け継がれています。
日本語では、この漢文の訓読から「老いてはますます壮んなるべし」という形で用いられます。今では、年を取っても意気を失わず、むしろ若い人に劣らないほど元気に物事へ取り組むべきだ、という励ましの言葉として使われます。
「老いてはますます壮んなるべし」の使い方




「老いてはますます壮んなるべし」の例文
- 祖父は八十歳を過ぎても地域の清掃活動に参加し、老いてはますます壮んなるべしを体現している。
- 退職後に大学で学び直す父の姿を見ると、老いてはますます壮んなるべしという言葉がよく似合う。
- 年齢を理由にあきらめず、新しい店を開いた店主は、老いてはますます壮んなるべしの気概をもっている。
- 長年の経験を生かして若い社員を支える部長は、老いてはますます壮んなるべしという言葉どおりの人だ。
- 祖母は毎朝の散歩と読書を欠かさず、老いてはますます壮んなるべしと家族を驚かせている。
- 町内会の会長は高齢になっても行事の準備に先頭で立ち、老いてはますます壮んなるべしの精神を示した。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・范曄『後漢書』。























