【故事成語】
奢る者は心常に貧し
【読み方】
おごるものはこころつねにまずし
【意味】
ぜいたくを好む人は、どれほど物を手に入れても満足できず、いつも心に不足や不満を抱えるものだということ。


【英語】
・The more you have, the more you want(持てば持つほど、さらに欲しくなる)
【類義語】
・足るを知る者は富む(たるをしるものはとむ)
【対義語】
・倹なる者は心常に富む(けんなるものはこころつねにとむ)
「奢る者は心常に貧し」の故事
この言葉は、唐末から五代十国時代に生きた道士・譚峭の著とされる『化書(かしょ)』(10世紀ごろ)に基づきます。『化書』は全六巻からなり、この一節は巻六「儉化」の「天牧」に出てきます。
「天牧」では、ぜいたくな人と倹約する人の暮らし方を比べています。ぜいたくな人は三年分として計画した物を一年で使い、倹約する人は一年分を三年にわたって用いると述べ、同じ財産でも、使い方によって不足にも余裕にも変わることを説いています。
さらに、ぜいたくな人は富んでいても足りないと思い、倹約する人は貧しくても余りがあると感じる、と話を進めます。その結論として、「奢者心常貧、儉者心常富」とあります。ぜいたくな人の心はいつも貧しく、倹約する人の心はいつも富んでいる、という意味です。
ここでいう「奢」は、自分の身の程を越えて、むやみにぜいたくすることを表します。「心が貧しい」とは、財産が少ないという意味ではなく、すでに多くの物を持っていても満足できず、なお足りないと思い続ける心の状態を指します。
したがって、この言葉は、裕福な人を一律に非難するものではありません。欲しい物を次々と手に入れても、さらに新しい物や高価な物を求め続ければ、不足しているという思いから逃れられないことを戒めています。
「天牧」では続いて、ぜいたくな人には心配が多く、倹約する人には幸いが多いとも述べています。そして、倹約を最後まで守れる人は、天下を治める者にもなれると説き、個人の暮らし方から、国を治める者の心構えへと話を広げています。
漢文の原形は、「奢者心常貧」という簡潔な形です。日本語では「奢者は心嘗に貧し」という形もあり、「奢る者は心常に貧し」という、意味を取りやすい言い方でも表されるようになりました。
この故事成語が伝えているのは、持っている物の量と心の豊かさとは、必ずしも同じではないという教えです。物を得ることだけに満足を求めれば、欲望とともに不足感も大きくなりますが、今ある物を大切にし、足ることを知れば、心には落ち着きと豊かさが生まれます。
「奢る者は心常に貧し」の使い方




「奢る者は心常に貧し」の例文
- 母は、高価な服を次々に買っても満足しない兄に、奢る者は心常に貧しと戒めた。
- 奢る者は心常に貧しというように、ぜいたくに慣れると、小さな喜びに気づきにくくなる。
- 祖父は、必要のない家電まで欲しがる私に、奢る者は心常に貧しと教えた。
- 見栄のために豪華な設備を増やし続ける会社は、まさに奢る者は心常に貧しというありさまだった。
- 町内会は奢る者は心常に貧しの教えを生かし、祭りの飾りをむやみに豪華にせず、必要な費用を守った。
- 奢る者は心常に貧しを胸に、彼女は流行品を追い求めず、今ある物を長く大切に使った。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・田村健吾「A Comparative Study of English and Japanese Proverbs: With Special Reference to Well-known English Proverbs (8)」『東京音楽大学研究紀要』2009年。
・譚峭『化書』10世紀ごろ。























