【ことわざ】
思うようなら子と三人
【読み方】
おもうようならことさんにん
【意味】
人生が思い通りになるなら、夫婦と子ども一人の三人で暮らすのがよいということ。


【類義語】
・死なぬものなら子一人、減らぬものなら金百両(しなぬものならこひとり、へらぬものならかねひゃくりょう)
「思うようなら子と三人」の語源・由来
「思うようなら」の「思うよう」は、自分が心に描いたとおり、望んだとおりという意味です。「なら」は仮定を表すため、前半全体では、「物事が自分の望みどおりになるのなら」という意味になります。
後半の「子と三人」は、「子どもが三人」という意味ではありません。「子と」の助詞「と」は、一緒にいる相手を表しており、夫婦二人が子ども一人と暮らす、合わせて三人の家族を指します。
この言葉の大切な点は、「子どもは一人がよい」と、数だけを決めているところにはありません。たとえ一人でも、その子が病気や事故に遭わず、健やかに成長するのであれば、親子三人の暮らしは満ち足りたものになるという願いを表しています。
この考え方は、「死なぬものなら子一人、減らぬものなら金百両」という類義語にも、いっそうはっきりと表れています。子どもが決して亡くならないのであれば一人で足り、使っても減らないのであれば金も百両で足りるという、安心が保証されるなら必要以上に多くを望まない、という言葉です。
江戸時代には乳児死亡率が高く、子どもが生まれても、無事に育つとは限りませんでした。そのため、子ども一人が確実に成人するという願いは、現実には簡単にかなわない切実な望みでした。「思うようなら」という仮定の言い方には、理想どおりには進まない人生への深い実感も込められています。
同じく子どもの数を扱う言葉に、「多し少なし子三人」や「負わず借らずに子三人」があります。こちらは、子どもは三人ほどいるのが、多すぎも少なすぎもせず、暮らしの上で望ましいという考えを表します。
これに対して、「思うようなら子と三人」の「三人」は、家族全体の人数です。「子三人」と「子と三人」は、助詞一つの違いですが、前者は三人の子ども、後者は夫婦と子ども一人を指すため、意味を取り違えないことが大切です。
このことわざは、特別な富や大勢の家族を望むのではなく、夫婦と一人の子が穏やかに暮らせることを幸せとする、つつましい願いを短い言葉にまとめています。一方で、初めに「思うようなら」と断ることによって、子どもの成長も家族の暮らしも、望みどおりになるとは限らないという人生の厳しさも伝えています。
現在では、家族の人数や暮らし方はさまざまであり、どの形だけが理想だと決めることはできません。「思うようなら子と三人」は、現代の家庭に一つの形を押し付ける言葉ではなく、子どもが無事に育つことを何よりの幸せとした、昔の人々の願いを伝えることわざです。
「思うようなら子と三人」の使い方




「思うようなら子と三人」の例文
- 民俗資料を読んで、思うようなら子と三人という昔の家族観を知った。
- 祖母は思うようなら子と三人という言葉を挙げ、子の健やかな成長を願う心を語った。
- 思うようなら子と三人は、子ども三人ではなく、夫婦と子一人の三人暮らしを指す。
- 授業では、思うようなら子と三人を手掛かりに、昔の人々が家族に抱いた願いを考えた。
- 思うようなら子と三人ということわざには、一人の子が無事に育ってほしいという切実な思いが込められている。
- 現代の家族の形は多様だが、思うようなら子と三人は昔の庶民の理想を伝える言葉として読める。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・鬼頭宏「歴史人口学からみた生と死(十二・最終回)」『幼児の教育』第80巻第12号、日本幼稚園協会、1981年。























