【ことわざ】
親の恩は子で送る
【読み方】
おやのおんはこでおくる
【意味】
親から受けた恩は、自分の子を立派に育てることで報いるものだということ。


【類義語】
・親の恩は次第送り(おやのおんはしだいおくり)
・親の思いは子に送る(おやのおもいはこにおくる)
「親の恩は子で送る」の語源・由来
「親の恩は子で送る」は、親が自分を育ててくれた恩に、自分の子をきちんと育てることによって報いるという教えです。「子へ送る」ではなく「子で送る」といい、「子を育てることによって」という手段を表している点が、このことわざの大切なところです。
ここで使われている「送る」は、現在よく使われる「品物を届ける」「人を見送る」という意味ではありません。古い日本語では、相手から受けた恩に報いたり、償いを果たしたりすることも「送る」といいました。
この意味の「送る」は、室町時代末期から近世初期に成立した幸若舞(こうわかまい)の『大臣』に、すでに出てきます。作中には、しばらく仕えることで「恩を送れ」と求める場面があり、受けた恩への返礼を果たすという意味で、「送る」が使われています。
さらに、人情本(にんじょうぼん)『三日月於専』(1824年・江戸時代後期)には、「何時か御恩を送らうか」という一節があります。これは、いつになったら受けた恩を返すことができるだろうかという意味であり、「恩を送る」が「恩返しをする」という言い方として、江戸時代にも用いられていたことを示しています。
この古い「恩を送る」という言い方を、親子のつながりに当てはめたものが「親の恩は子で送る」です。親が子へ注いだ愛情を、成長した子が同じ形で親へ返すことは難しくても、今度は自分の子を愛情深く育てることで、親から受け継いだものを次の世代に生かすことができます。
よく似た形に、「親の恩は次第送り」があります。「次第送り」は、親から子へ、子からさらにその子へと、恩返しが順々に続いていくことを表します。また、「親の思いは子に送る」という言い方もあり、親から受けた思いやりを自分の子へ向けるという世代の連なりを、より直接的に言い表しています。
親が亡くなったあとでは、世話をしたり、喜ぶ姿を見せたりして、直接恩を返すことはできません。そのような場合にも、自分の子を責任をもって育てることが、親の教えや愛情を受け継ぎ、親の恩に報いる大切な供養になるという考えが、このことわざには込められています。
このことわざは、恩を一度の贈り物で返し終えるのではなく、自分が受けた養育の恵みを、次の世代の養育へ生かしていくことを教えています。親から子へ、さらにその子へと、愛情と責任をつないでいくことによって、親への恩返しが代々果たされていくという意味です。
「親の恩は子で送る」の使い方




「親の恩は子で送る」の例文
- 母は、親の恩は子で送るという思いから、自分が受けた愛情を惜しみなく娘に注いだ。
- 親の恩は子で送るという言葉どおり、父は祖父から教わった礼儀を息子にも丁寧に伝えた。
- 祖母への恩返しが十分にできなかった彼女は、親の恩は子で送ると心に決め、わが子を大切に育てた。
- 親の恩は子で送るという教えを受け継ぎ、兄は仕事で忙しい中でも子どもと向き合う時間を大事にした。
- 社長は親の恩は子で送ると語り、父から学んだ仕事への誠実さを後継ぎの息子に教えた。
- 子育てについて語り合う地域の集まりで、親の恩は子で送るということわざが紹介された。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』。
・幸若舞曲『大臣』室町時代末期〜近世初期。
・『三日月於専』1824年。























