【ことわざ】
思い立ったが吉日
【読み方】
おもいたったがきちじつ
【意味】
何かをしようと決心したら、その日をよい日と考え、すぐに取りかかるのがよいということ。


【英語】
・There’s no time like the present(物事を始めるのに今ほどよい時はない)
【類義語】
・善は急げ(ぜんはいそげ)
・好機逸すべからず(こうきいっすべからず)
【対義語】
・待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり)
「思い立ったが吉日」の語源・由来
「思い立つ」とは、あることをしようという考えを起こし、決心することです。「吉日(きちじつ)」は、縁起がよく、祝い事や新しい物事を行うのに適した日を指します。したがって、「思い立ったが吉日」は、何かを始めようと心に決めた日こそ、実行に移すのに最もよい日であると表した言葉です。
このことわざの背景には、暦(こよみ)に示された日の吉凶を気にし、物事を始める前に吉日を選ぶ習慣がありました。日だけでなく、方角の吉凶まで考えて行動を決めることもありましたが、よい日を待ち続けているうちに機会を逃したり、最初の意欲が薄れたりするおそれがあります。そこで、暦の上の吉日を待つのではなく、自分が決心した日を吉日とみなすという、発想を逆転させた言い方が生まれました。
現在の言い方につながる古い形は、謡曲(ようきょく)『唐船(とうせん)』(16世紀中期までに成立、作者不詳)に出てきます。そこには、「今一度対面申さんと、おもひたつ日を吉日と、舟のともづな解き初め」とあります。もう一度会いたいと決心し、思い立った日を吉日として、船のとも綱を解き始めたという意味です。
『唐船』の主人公である祖慶官人(そけいかんにん)は、中国の明州(みんしゅう)に家族を残したまま日本で捕らわれ、筑前国(ちくぜんのくに)の箱崎(はこざき)で長い年月を過ごしていました。中国に残された二人の子どもは、父を故郷へ連れ戻そうと考え、身代金となる財宝を船に積んで日本へ向かいます。
「思い立つ日を吉日」という一節は、子どもたちが父との再会を願い、ためらわずに船出する場面で用いられています。暦を開いて安全な日を選ぶというより、父に会いたいという強い決心が起こったその時を、旅立つべき日としたのです。この場面では、単に急いで行動するだけでなく、ためらいを振り切り、大切な目的へ向かって踏み出す意志が表れています。
この古い用例では、「思い立つ日を吉日」という形を取っています。「思い立った日を吉日として行動する」という関係が、「を」によって表されているのです。現在は、「思い立つ日が吉日」や「思い立ったが吉日」という、短く言い切る形でも広く用いられています。
「思い立ったが吉日」は、何の準備もせず、むやみに行動せよという教えではありません。必要な準備がある場合でも、調べ始める、予定を立てる、申し込むなど、その日にできることに着手し、決心を先延ばしにしないという意味です。
16世紀中期には「思い立つ日を吉日」という形で使われていた表現が、現在では「思い立ったが吉日」として定着しています。よい機会が外から訪れるのを待つのではなく、自ら決心した時を行動の好機に変えるという、前向きな教えを表すことわざです。
「思い立ったが吉日」の使い方




「思い立ったが吉日」の例文
- 思い立ったが吉日と考え、父は長く迷っていた資格試験にその日のうちに申し込んだ。
- 部屋を片づけようと思った妹は、思い立ったが吉日とばかりに机の引き出しを開けた。
- 思い立ったが吉日だから、夏休みを待たずに今日から毎朝の読書を始めよう。
- 祖母は思い立ったが吉日と言って、以前から会いたかった友人へすぐに手紙を書いた。
- 地域の清掃活動を提案した会長は、思い立ったが吉日と、その日のうちに参加者を募った。
- いつか店を開きたいと話す青年に、店主は思い立ったが吉日だから、まず計画を書いてみなさいと勧めた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・佐成謙太郎『謡曲大観 第五巻』明治書院、1931年。
・Cambridge University Press & Assessment『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』。
・『唐船』16世紀中期。























