【ことわざ】
思い立ったが吉日
【読み方】
おもいたったがきちじつ
【意味】
何かをしようと決心したら、日を選んで先のばしにせず、すぐに始めるのがよいということ。


【英語】
・There is no time like the present(何かをするなら今がいちばんよい)
【類義語】
・善は急げ(ぜんはいそげ)
・好機逸すべからず(こうきいっすべからず)
【対義語】
・物には時節(ものにはじせつ)
「思い立ったが吉日」の語源・由来
「思い立ったが吉日」は、特定の中国の古い逸話から生まれた故事成語ではなく、暦の吉凶を気にする日本の生活感覚を背景にもつことわざです。「吉日」とは、縁起のよい日、祝い事など何かをするのによいとされる日のことをいいます。読みは「きちじつ」のほか、「きちにち」「きつじつ」もあり、「思い立ったが吉日」の中では「きちじつ」と読むのが一般的です。
「吉日」という言葉そのものは古くから使われてきました。『続日本紀』(しょくにほんぎ)天応元年、つまり781年の記事には、年の初めに暦を告げる場面で「吉日」の語が出てきます。また、『今昔物語集』(こんじゃくものがたりしゅう、1120年ごろ成立)にも、物事を行う日を選ぶ場面で「吉日」が使われています。もともと「吉日」は、物事を始めたり祝ったりするのにふさわしい日を、暦や習わしに照らして選ぶ考えと結びついていました。
このことわざの背景には、陰陽道(おんみょうどう)にもとづく暦に従い、吉日を選んで物事を行う風習がありました。日や方角の吉凶を気にしていると、始める時期を逃したり、最初の意気込みが薄れたりすることがあります。「思い立ったが吉日」は、その発想を逆にして、暦の上の吉日を待つよりも、決心した日こそがよい日だと考える言い方です。
古い形としては、「思い立つ日を吉日」という言い回しが確認できます。『光悦本謡曲・唐船(とうせん)』(1554年ごろ・戦国時代)には、「今一度対面申さん」と思い、船出しようとする場面で「おもひたつ日を吉日と」という表現が出てきます。ここでは、父にもう一度会いたいという強い思いを抱いた子どもたちが、思い立ったその時をよい日として、船のともづなを解き始める流れの中で使われています。
この古い用例では、現在よく使われる「思い立ったが吉日」ではなく、「思い立つ日を吉日」という形になっています。つまり、最初は「思い立った日を吉日として行動する」という意味合いが、より文の形に近い言い回しで表されていました。そこから後に、「思い立つ日が吉日」「思い立ったが吉日」のように、より短く覚えやすいことわざの形へ整っていったと考えられます。
現在の形では、「何かをしようという気持ちになったら、その日を吉日と思ってすぐに始めるのがよい」という意味で使われます。昔の暦の吉凶を待つ考えをふまえながらも、このことわざは「よい日を待つ」のではなく、「動き出す心が起きた日をよい日にする」という前向きな教えに変えています。
ただし、「思い立ったが吉日」は、無計画に急げという意味ではありません。大切なのは、始めようという気持ちをむだに先のばしにしないことです。準備が必要なことでも、まず調べる、申し込む、机に向かう、片づけを始めるなど、小さな一歩をその日に踏み出すことが、このことわざの中心にあります。
「思い立ったが吉日」の使い方




「思い立ったが吉日」の例文
- 部屋の整理を始めようと決めたので、思い立ったが吉日で、その日のうちに机の上から片づけた。
- 健康のために歩く習慣をつけようと思い、思い立ったが吉日で夕方から散歩を始めた。
- 前から学びたかった英会話教室に、思い立ったが吉日で申し込みをした。
- 自由研究の題材が決まったため、思い立ったが吉日で図書館へ資料を探しに行った。
- 町内会の花壇を整えたいと思った人たちは、思い立ったが吉日とばかりに道具をそろえた。
- 先延ばしにしていた手紙の返事を、思い立ったが吉日でその日の夜に書き上げた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・『光悦本謡曲・唐船』1554年ごろ。
・Cambridge University Press & Assessment『Cambridge Dictionary』。























