【ことわざ】
柿を盗んで核を隠さず
【読み方】
かきをぬすんでさねをかくさず
【意味】
悪事や欠点を隠したつもりでも、肝心の証拠を残したために、すぐ人に知られてしまうことのたとえ。


【英語】
・The truth will out.(真実はいずれ明るみに出る)
【類義語】
・頭隠して尻隠さず(あたまかくしてしりかくさず)
・身を蔵し影を露わす(みをかくしかげをあらわす)
【対義語】
・公明正大(こうめいせいだい)
「柿を盗んで核を隠さず」の語源・由来
「柿を盗んで核を隠さず」は、他人の柿を盗んで食べた者が、食べ終えたあとの核を隠さなかったため、盗みの証拠を残してしまうという見立てから生まれたことわざです。柿そのものを手元からなくしても、核が落ちていれば、そこで柿を食べたことが分かってしまいます。
ここでいう「核」は、「かく」ではなく「さね」と読みます。「さね」は、果実の中心にある堅い部分や種を表す古い言葉で、「真根」の意味から生まれたとされます。
漢字の「核」にも、果実の種子を包む堅い部分という意味があります。この意味の古い例は、『色葉字類抄(いろはじるいしょう)』(1177〜1181年ごろ成立、平安時代後期、橘忠兼編)にも出てきます。
「柿の核」という言い方も、古くから使われています。『虎明本狂言(とらあきらぼんきょうげん)』に収められた狂言『柿山伏(かきやまぶし)』には、「やらきどくや、かきのさねがおつる」とあります。
『虎明本狂言』は、1642年・江戸時代前期に、大蔵流十三世宗家の大蔵虎明が書き留めた狂言台本です。中世から受け継がれた言葉と、江戸時代初期の言葉とを伝える重要な資料です。
『柿山伏』では、修行帰りの空腹な山伏が柿の木に登り、勝手に実を食べます。畑の主がやって来ると、山伏は木に隠れますが、主はすでにその姿を見つけており、カラスや猿のまねをさせて山伏をからかいます。
この狂言を、ことわざの直接の出典と断定することはできませんが、柿を盗み食いした者が身を隠し、その行為の跡によって正体を知られるという、よく似た生活感覚を伝えています。「柿の核」が食べた跡として残ることも、ことわざの見立てを理解する手がかりになります。
ことわざの前半にある「柿を盗んで」は、すでに隠さなければならない悪事を行ったことを表します。後半の「核を隠さず」は、その悪事を秘密にしようとしながら、最も分かりやすい証拠を始末しなかった不注意を表しています。
そのため、このことわざは、単に「悪いことはいつか明らかになる」という意味だけではありません。隠そうとはしたものの、手落ちによって肝心な部分を隠せず、かえって悪事や欠点を人に知らせてしまう愚かさをあざける言葉です。
「核」は、意味を分かりやすくするため、「種」と表すこともあります。「柿を盗んで種隠さず」という形でも、盗み食いのあとに種を残し、証拠を隠しきれないという同じ意味を表します。
意味の近い「頭隠して尻隠さず」は、姿の一部だけを隠し、すべて隠れたつもりになる様子を表します。それに対して、「柿を盗んで核を隠さず」は、食べたあとの証拠を残すという、日常生活に即した具体的な場面によって、同じ愚かさを表しています。
現在では、つじつまの合わない嘘をついた場合や、不正を隠そうとして記録を残した場合などにも用いられます。隠し方の手ほどきをする言葉ではなく、目先だけを取り繕っても、残された事実によってごまかしが明らかになることを戒めることわざです。
「柿を盗んで核を隠さず」の使い方




「柿を盗んで核を隠さず」の例文
- 宿題をしたと嘘をついたのに、白紙のノートを机に出したままでは、柿を盗んで核を隠さずだ。
- 菓子をこっそり食べて包み紙を床に残すとは、まさに柿を盗んで核を隠さずである。
- 帳簿を書き換えても元の記録が保存されており、柿を盗んで核を隠さずとなった。
- 無断で車を使いながら鍵を自分の部屋に置いたため、柿を盗んで核を隠さずですぐに発覚した。
- 匿名で悪口を書いたつもりでも本人しか知らない内容を記せば、柿を盗んで核を隠さずになりかねない。
- 欠席の理由をごまかしながら旅行の写真を公開するのは、柿を盗んで核を隠さずというものだ。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』公益財団法人日本漢字能力検定協会、2014年。
・大塚光信編『大蔵虎明能狂言集 翻刻註解』清文堂出版、2006年。























