【ことわざ】
貸し借りは他人
【読み方】
かしかりはたにん
【意味】
親子や兄弟のように親しい間柄でも、金銭の貸し借りをすると、他人同様の冷たい関係になりがちであるということ。


【英語】
・Neither a borrower nor a lender be.(借り手にも貸し手にもなるな)
【類義語】
・親子の仲でも金は他人(おやこのなかでもかねはたにん)
・金の貸し借り不和の基(かねのかしかりふわのもと)
・金を貸せば友を失う(かねをかせばともをうしなう)
【対義語】
・血は水よりも濃い(ちはみずよりもこい)
「貸し借りは他人」の語源・由来
「貸し借りは他人」は、「貸し借り」と「他人」を結び付けたことわざです。「貸し借り」は、物や金銭を人に貸すことと、人から借りることの両方を表します。「貸借」と書いて「かしかり」と読む形もあります。
ここでの「他人」は、血のつながりがない人という文字どおりの意味だけではありません。親子や兄弟であっても、金銭を貸した側と借りた側とに分かれると、返済を求めたり催促を避けたりして、よそよそしく冷たい関係になりやすいことを表しています。
「貸し借り」という言葉の古い用例の一つは、浮世草子(うきよぞうし)『傾城禁短気(けいせいきんたんき)』(1711年ごろ・江戸時代中期、江島其磧作)に出てきます。この作品は、江戸・大坂・京都の遊里における人間関係や駆け引きなどを描いた書物です。
その中には、「いづれ女郎のかし借りは、言ひ合て中間法度にしたきもの」とあります。遊女どうしの貸し借りは、相談のうえで仲間内の禁止事項にしたいという趣旨であり、貸し借りが人間関係のもつれを招くものとして扱われています。
この用例は、「貸し借りは他人」という完成した形ではありません。しかし、金品の貸し借りには争いや不和が伴いやすいため、親しい仲間の間でも避けるべきだという考えが、江戸時代の生活の中にあったことを示しています。
現在のことわざに近い考え方は、「親子の仲でも金銭は他人」という形にも表れています。この言い方は、人情本(にんじょうぼん)『孝女二葉錦(こうじょふたばのにしき)』(1829年・江戸時代後期、梅暮里谷峩述)の用例と結び付けて伝えられています。
「親子の仲でも金銭は他人」は、血を分けた親子であっても、金銭に関することでは、他人と同じようにけじめをつけるべきだという意味です。「貸し借りは他人」は、この考えを金銭の貸し借りそのものに焦点を当て、さらに短く言い表した形といえます。
同じ教えには、「金銭に親子なし」「金銭は他人」「銭金は親子でも他人」などの形もあります。いずれも、親子や兄弟という近い関係であっても、金銭については情だけに任せず、貸した額や返す期限を明らかにしなければならないという考えを表しています。
また、表記には「貸し借りは他人」と「貸借は他人」があります。どちらも読みは「かしかりはたにん」で、親しい親子兄弟であっても、金銭の貸し借りによって他人同様の関係になりやすいという同じ意味を表します。
このことわざには、二つの教えが重なっています。一つは、金銭が絡むと、親しい者どうしでも関係が冷えやすいという経験則です。もう一つは、そのような不和を防ぐため、身内との貸し借りにも明確な約束とけじめを設けるべきだという戒めです。
したがって、「貸し借りは他人」は、家族を信用してはならないという意味ではありません。大切な関係を守るためにこそ、金銭の貸し借りを情だけで曖昧にせず、返済の額や期限を互いにはっきりさせる必要があると教えることわざです。
「貸し借りは他人」の使い方




「貸し借りは他人」の例文
- 親しい兄弟であっても、貸し借りは他人と考え、借りた金は期限までに返すべきだ。
- 父は貸し借りは他人と言い、息子に金を貸すときにも返済日を明確にした。
- 貸し借りは他人だからこそ、親友に借りた費用を曖昧にしてはならない。
- 祖母は貸し借りは他人を家訓とし、身内との金銭関係にも厳しくけじめをつけた。
- 親戚だから催促しにくいと悩む母に、父は貸し借りは他人だと諭した。
- 共同事業を始める二人は、貸し借りは他人の教えに従い、金銭の約束を書面に残した。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・江島其磧『傾城禁短気』1711年。
・梅暮里谷峩『孝女二葉錦』1829年。
・William Shakespeare『Hamlet』。























