【ことわざ】
河童の寒稽古
【読み方】
かっぱのかんげいこ
【意味】
他人が見れば大変そうに見えても、本人にとっては何でもないことのたとえ。河童が寒中に泳ぎの稽古をしても、寒さや苦しさを感じないという考えからいう。


【英語】
・no sweat.(難しくないこと、問題なくできること)
【類義語】
・屁の河童(へのかっぱ)
・河童の屁(かっぱのへ)
・平気の平左(へいきのへいざ)
「河童の寒稽古」の語源・由来
「河童の寒稽古」は、水にすむ河童と、寒い時期に行う稽古を組み合わせたことわざです。寒中に泳ぐことは人間には厳しい修行に見えますが、水中にすむ河童にとっては苦にならない、という発想から生まれた言い方です。
「河童」は、「かわわっぱ」が変化した言葉です。水陸両生の想像上の動物で、頭に皿をもち、背中に甲羅があるものとして語られてきました。
河童は、川や池などの水辺に結びつく妖怪です。水の怪としてよく知られ、頭の皿の水がなくなると力を失うという特徴も語られています。
また、「河童」には、水泳のうまい人や、泳いでいる子どもを指す意味もあります。この点からも、河童という言葉が水泳や水の中での身のこなしと強く結びついていたことが分かります。
「寒稽古」は、寒中に早朝や夜間、武芸・スポーツ・音曲などを稽古することを指します。とくに寒の間の稽古をいう言葉で、冬の季語としても使われます。
「寒稽古」という言葉の古い用例には、『季引席用集』(1818年・江戸時代後期)に出る「寒稽古」があります。江戸時代には、寒さの中で行う稽古を表す言葉として、俳諧の季語の世界にも取り入れられていました。
寒中に水へ入って泳ぐ「寒中水泳」は、冬の寒いときに行う水泳を指します。もとは、日本古来の泳法を伝える水練道場が寒稽古として行ったものといいます。
このことわざでは、人間にとってつらい「寒稽古」や「寒中水泳」のイメージが、河童には当てはまりません。河童はもともと水の中で力を発揮する存在なので、寒い時期に泳ぐ姿も、本人にとっては平気だという見立てになります。
そのため、「河童の寒稽古」は、苦しそうに見えることと、本人が実際に苦しんでいるかどうかは別だ、ということを表します。外から見た印象だけで相手の負担を決めつけない、という読み方もできます。
同じく河童を用いる「屁の河童」「河童の屁」も、なんとも思わないことや、容易で問題にならないことを表します。河童をめぐる言い方には、水中で平気にふるまう存在としての河童の性質を生かしたものが多くあります。
現在の「河童の寒稽古」は、本人には苦にならないことを、周りが大変そうだと思っている場面で使います。見かけの厳しさと本人の平気さとのずれを、河童という親しみやすい妖怪を通して表したことわざです。
「河童の寒稽古」の使い方




「河童の寒稽古」の例文
- 真冬の早朝練習も、長距離選手の彼には河童の寒稽古だった。
- 寒い工房での細かな作業も、職人にとっては河童の寒稽古にすぎない。
- 周りは大変そうだと心配したが、本人は楽しそうで、まさに河童の寒稽古だった。
- 雪の中の犬の散歩も、山育ちの祖父には河童の寒稽古のようなものだ。
- 難しそうな暗算を平気で解く姉を見て、河童の寒稽古とはこのことだと思った。
- 暑さにも寒さにも慣れている配達員には、その程度の天気は河童の寒稽古だった。
主な参考文献
・現代言語研究会『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館編『日本大百科全書』小学館、1984〜1994年。























