『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』講談社より出版。詳細はコチラ!

【紙子着て川へ入る】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

紙子着て川へ入る

【ことわざ】
紙子着て川へ入る

【読み方】
かみこきてかわへはいる

【意味】
無分別なことや無謀なことをして、自ら破滅を招くことのたとえ。

ことわざ博士
紙子は、和紙を糊で張り合わせ、渋を引くなどして仕立てた、軽くて保温性に富む衣服だよ。
助手ねこ
自分に大きな損害が及ぶと分かるような行動を、考えなしに選ぶ場面で用いるニャン。

【英語】
・dig one’s own grave.(愚かな行いによって、自分の失敗や破滅を招く)

【類義語】
・自ら墓穴を掘る(みずからぼけつをほる)
・雪仏の水遊び(ゆきぼとけのみずあそび)

【対義語】
・転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ)

【スポンサーリンク】

「紙子着て川へ入る」の語源・由来

ことわざを深掘り

「紙子」は「紙衣」とも書き、和紙を材料として作った衣服を指します。腰の強い和紙を糊で張り合わせ、渋を引いて乾かしたあと、何度も揉んで柔らかく仕上げました。

紙でできているとはいえ、紙子は単なる薄い紙を身に巻いたものではありません。軽くて暖かいため、古くから僧衣や防寒着として使われ、戦国時代の武将が陣羽織や道服として着ることもありました。

しかし、いくら丈夫に加工した紙子でも、着たまま水の中へ入るのは、衣服を自ら傷める無分別な行為です。この分かりやすい取り合わせから、自分の行動によって自分自身を破滅へ導くことのたとえが生まれました。

このことわざには、「紙子着て川へはまる」という形もあります。ここでいう「はまる」は、川へ落ち込むという意味で、「入る」はその異なる言い方です。

また、「紙子着て川立ち」や「紙子の水かけあい」という近い表現もあります。いずれも、水に弱い紙の衣服を着ながら、わざわざ水に近づいたり、水を掛け合ったりするという、結果の明らかな無謀さを表しています。

古い用例は、近松門左衛門の浄瑠璃(じょうるり)『女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)』(1721年・江戸時代中期、近松門左衛門著)にあります。この作品は三段からなる世話物で、享保6年に大坂の竹本座で初演されました。

物語の主人公は、大坂天満の油屋河内屋の息子、与兵衛(よへえ)です。与兵衛は放蕩を重ねて金に困り、家族に乱暴を働いたため、母のお沢(さわ)から勘当を言い渡されます。

ところが、母も継父の徳兵衛(とくべえ)も、心の中では与兵衛を見捨てきれません。二人は同業者の妻であるお吉(きち)を訪ね、与兵衛が現れたら、家へ戻るよう説き聞かせてほしいと頼みます。

その場でお沢は、与兵衛をもうかばうつもりはないという態度を示し、「紙子きて川へはまらふが」と言います。紙子を着て川へ落ちようと、つまり、与兵衛が無謀な行いによって身を滅ぼそうと、もう構わないという意味です。

しかし、お沢の懐からは、与兵衛に渡そうとして持ち出した銭が落ちます。口では見放したように言いながら、実際には息子を心配していたことが明らかになる場面であり、「紙子着て川へはまる」は、自ら破滅へ向かう者の姿を強く印象づけています。

この用例から、少なくとも江戸時代中期には、紙の衣服で川へ入るという光景が、無謀な行為や自滅を表すたとえとして通じていたことが分かります。ただし、この表現を近松門左衛門が作ったとまではいえず、作品以前から人々の間で使われていた可能性もあります。

のちに、「はまる」を「入る」とする形も用いられ、「紙子着て川へ入る」として定着しました。現在では、実際に紙子を着て水へ入ることではなく、結果を考えず、自ら失敗や破滅を招く行動をすることを表します。

「紙子着て川へ入る」の使い方

健太
明日の算数テストの勉強をしないで、夜中までゲームの大会に向けて練習する子がいるんだ。
ともこ
テストで困ると分かっているのに、それでは紙子着て川へ入るようなものだよ。
健太
ぼくも心配になって、ゲームは一時間にして勉強もしようって話したよ。
ともこ
それなら安心だね!自分から悪い結果を招く前に、予定を立て直せてよかったよ。
【スポンサーリンク】

「紙子着て川へ入る」の例文

例文
  • 返す見込みもないのに高い利息で金を借りるのは、紙子着て川へ入るようなものだ。
  • 安全点検を省いて工事を急ぐなど、紙子着て川へ入るに等しい行為だ。
  • 試験の前日に徹夜で遊ぶのは、まさに紙子着て川へ入るというものだ。
  • 信用を得ようとして記録を改ざんすれば、紙子着て川へ入る結果になりかねない。
  • 会社の損失を隠すために新たな不正を重ねるとは、紙子着て川へ入るような判断だ。
  • 周囲の警告を無視して危険な計画を進めた彼は、紙子着て川へ入ることになった。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館『大辞泉』編集部編、松村明監修『大辞泉』小学館、1995年。
・『日本大百科全書』小学館、1984〜1994年。
・近松門左衛門『女殺油地獄』1721年。
・Merriam-Webster, Merriam-Webster.com Dictionary.





『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』(講談社)発売中♪

マンガでわかる ことわざ図鑑

◆試験に出ることわざを網羅
ことわざは小学、中学、高校、大学、さらに就職試験の問題になっています。ことわざの試験対策としてもオススメの一冊。

◆マンガで楽しみながらことわざを知る! 憶える!
本書では、マンガで楽しくわかりやすくことわざを解説し、記憶に定着させます。