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【頷下の珠】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

頷下の珠

【故事成語】
頷下の珠

【読み方】
がんかのたま

【意味】
驪竜のあごの下にあるという珠玉から、手に入れにくい貴重なもののたとえ。

ことわざ博士
「頷下」は、あごの下という意味をもつ言葉だよ。
助手ねこ
「頷下の珠」は、得ることが難しい宝や、危険を冒してでも求められるほど大切なものを指す場面で用いるニャン。

【英語】
・a rare treasure.(めったに得られない貴重な宝)

【類義語】
・驪竜頷下の珠(りりょうがんかのたま)
・驪珠(りしゅ)
・虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)

【対義語】
・君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず)

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「頷下の珠」の故事

故事成語を深掘り

「頷下の珠」は、中国古典の『荘子(そうじ)』「列禦寇(れつぎょこう)」に出てくる話にもとづく故事成語です。『荘子』は、中国戦国時代の思想家である荘子、名を周とする人物とその学派の思想を伝える道家の書物で、現在伝わる形は三十三編から成ります。

『荘子』は、内編・外編・雑編に分かれており、現在の三十三編本は晋の郭象の注本以来の形とされます。ほぼ戦国末、紀元前三世紀末にはまとまっていたと考えられ、寓話を多く用いて、人間の欲や名利へのとらわれを鋭く描きます。

「列禦寇」の中に、宋の王に会って十台の車を賜った人が、それを得意げに荘子へ見せた場面があります。荘子はその人に、ある貧しい親子の話をして、思いがけず得た栄誉の危うさを説きました。

その親子は、黄河のほとりで草を編む仕事をしながら暮らしていました。ある日、息子が深い淵にもぐり、「千金の珠」と呼ばれるほど高価な珠を得て帰ってきました。

父は喜ぶどころか、息子に石を取ってきて、その珠を砕けと言いました。父は、そのような珠は九重の深い淵にすむ驪龍のあごの下にあるはずだ、と考えたのです。

驪龍は、黒い竜を指します。『荘子』の言葉では、「千金の珠」は必ず深い淵の驪龍の頷下にあると述べられ、珠を得られたのは、竜がたまたま眠っていたからだと語られます。

もし驪龍が目を覚ましていたなら、息子の身はどうなっていたか分かりません。ここでは、高価な珠そのものよりも、それを得るために近づいた危険の大きさが強く示されています。

荘子はこの話を用いて、宋王から車をもらった人に注意を促しました。宋という国の深さは九重の淵どころではなく、宋王の恐ろしさは驪龍どころではない、という形で、権力者から得た利益の危うさを示しています。

もとの故事では、「頷下の珠」は、単なる美しい宝ではありません。竜のあごの下という、手を出せば命にかかわる場所にある宝として語られ、得がたいものと危険が一つに結びついています。

日本語では、「驪竜頷下の珠」という形も用いられました。『太平記(たいへいき)』(応安年間、1368〜1375年成立とされる南北朝時代の軍記物語)には、「驪龍頷下の珠をも自奪ふべし」という用例があり、危険を冒して得る貴重なものという理解が早くから伝わっていたことが分かります。

また、「頷下の珠」という短い形では、『枯木稿』(1574年ごろ)の「遊魚動荷」に「頷下珠」とある用例が示されています。ここでは、竜のあごの下の珠という故事をふまえ、珍しく価値の高いものを表す表現として使われています。

現在の「頷下の珠」は、危険を冒さなければ得られないほど貴重なもの、または、めったに手に入らない大切な宝を指して用いられます。もとの話を知ると、この言葉には、価値の高さだけでなく、軽々しく求めてはならない危うさも含まれていることが分かります。

「頷下の珠」の使い方

健太
自由研究で昔の商店街を調べたいのに、古い写真が一枚も見つからないよ……
ともこ
公民館の倉庫に、昭和の商店街を写した写真が一枚だけ残っているって聞いたよ。
健太
それは頷下の珠みたいに貴重だね! 大事な資料だから、ていねいにお願いして見せてもらおう。
ともこ
うん。借りられたら、みんなにも分かるように大切に使おうね。
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「頷下の珠」の例文

例文
  • 古い寺に伝わる一枚の絵図は、地域の歴史を知るうえで頷下の珠といえる資料だ。
  • 絶版になったその研究書は、専門家にとって頷下の珠のような一冊だった。
  • 長年探していた原稿が見つかり、編集者は頷下の珠を得た思いで喜んだ。
  • 祖父の戦前の日記は、家族の歩みを知るための頷下の珠となった。
  • 深海調査で得られた標本は、研究チームにとって頷下の珠に等しい発見だった。
  • 名人の技を間近で学べる機会は、若い職人にとって頷下の珠のように貴重だった。

主な参考文献

・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・白川静『字通 普及版』平凡社、2014年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・『荘子』戦国末ごろ。
・『太平記』応安年間、1368〜1375年ごろ。





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