【ことわざ】
木は木、金は金
【読み方】
きはき、かねはかね
【意味】
物事の違いをはっきり区別し、ごまかさずに正しく扱うべきだということ。


【英語】
・make a distinction between things.(物事の違いをはっきり区別する)
・call a spade a spade.(物事をありのままに言う)
【類義語】
・木を木、金を金(きをき、かねをかね)
・石は石、金は金(いしはいし、かねはかね)
・木は木、竹は竹(きはき、たけはたけ)
【対義語】
・鷺を烏(さぎをからす)
「木は木、金は金」の語源・由来
「木は木、金は金」は、木と金属、または物と金銭のように、性質の違うものを混同しないという発想から生まれたことわざです。「木」は樹木や木材を指し、「金」は「かね」と読んで、金属の総称や金銭を表します。
このことわざでは、「木は木」「金は金」と同じ形をくり返すことで、それぞれの物を本来の姿のまま扱うべきだという考えを強めています。単に材料の違いを言うだけでなく、物事を正しく分け、うそやごまかしを入れない態度を表しています。
古い形として、「木ヲ木、金ヲ金」という言い方が伝わっています。これは、木は木として、金は金として扱うという形で、物事をそれぞれに分けて考えることを表す言い回しです。
この形は、江戸時代前期の俳諧論書『毛吹草(けふきぐさ)』(1645年刊、松江重頼編)に関わる形として伝えられています。『毛吹草』は、俳諧の作り方や言葉、四季の詞、世話付古語などを収め、広く流布した書物です。
同じ考えは、井原西鶴の浮世草子『日本永代蔵(にっぽんえいたいぐら)』(1688年刊)にも、近い形で出てきます。『日本永代蔵』は町人の金銭生活を題材にした作品で、6巻30章から成ります。
『日本永代蔵』巻四には、「木は木銀は銀に幾年かかはる事なし」という一節があります。ここでは、唐土人が約束を守り、絹物や薬種にまぎれ物をしないという文脈で、品物と銀を正しく扱う商いの誠実さが述べられています。
この「木は木、銀は銀」は、現在の「木は木、金は金」と完全に同じ表記ではありません。しかし、物を物として、金銭を金銭としてごまかさずに扱うという考えは、現在のことわざの意味とよくつながっています。
江戸時代後期には、小林一茶の『文政句帖』(文政5年、1822年)に、「つき合の涼しや木は木金は金」という句が出てきます。この句では、読みも「つきあいの すずしやきはき かねはかね」と示され、現在の形に近い「木は木金は金」が用いられています。
一茶の句では、「涼し」という夏の季語とともに、この言い方が置かれています。人とのつき合いにおいても、物事の区別がはっきりしていることは、気持ちのよさやすっきりした関係につながる、という読み取りができます。
柳田國男は、ことわざを並べて説明する中で、「木を木金を金」を「鷺を烏」の反対に当たるものとして挙げ、「事實は認めなければならぬ」と述べています。「鷺を烏」は、白い鷺を黒い烏だと言い張るように、道理をわざと反対に言い曲げることを表します。
この対比から分かるように、「木は木、金は金」は、相手を言いくるめるための言葉ではありません。事実を事実として認め、違うものを違うものとして扱うところに、このことわざの大切な意味があります。
現在では、会計をきちんと分ける、責任をあいまいにしない、実力や結果を正しく見る、といった場面で使われます。冷たく線を引くというよりも、正直で公正に物事を扱うためのけじめを表すことわざです。
「木は木、金は金」の使い方




「木は木、金は金」の例文
- 学級費と個人の買い物代は、木は木、金は金で別々に記録するべきだ。
- 友だちだからといって失敗を見逃すのではなく、木は木、金は金で事実を確かめる必要がある。
- 仕事の評価では、努力した部分と結果が出なかった部分を、木は木、金は金として分けて考える。
- 家族の間でも、借りたお金と贈り物は木は木、金は金で区別したほうがよい。
- 係の責任をあいまいにすると困るので、木は木、金は金ではっきり決めておいた。
- 説明をごまかさず、木は木、金は金の態度で話したことが、かえって信頼につながった。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・藤井乙男編『諺語大辞典』有朋堂、1910年。
・松江重頼編『毛吹草』1645年。
・井原西鶴『日本永代蔵』1688年。
・小林一茶『文政句帖』1822年。
・柳田國男『定本 柳田國男集 第21巻』筑摩書房、1970年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary.』























