【君子は下問を恥じず】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・英語)

君子は下問を恥じず

【故事成語】
君子は下問を恥じず

【読み方】
くんしはかもんをはじず

【意味】
徳を備えた立派な人は、自分より年齢や地位が低い人に教えを求めることを恥と思わない。知らないことは、相手の立場にかかわらず素直に尋ねるべきだという教え。

ことわざ博士
下問とは、自分より目下の人に質問し、教えを受けることをいうんだよ。
助手ねこ
年下の人や部下のほうが詳しい場面で、立場にこだわらず学ぼうとする態度を表すニャン。

【英語】
・Never be ashamed to ask and learn from anyone.(相手の立場にかかわらず、尋ねて学ぶことを恥じてはいけない)

【類義語】
・聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥(きくはいっときのはじ、きかぬはいっしょうのはじ)

「君子は下問を恥じず」の故事

故事成語を深掘り

「君子は下問を恥じず」は、古代中国の古典『論語(ろんご)』の「公冶長(こうやちょう)第五」に収められた、孔子と弟子の子貢(しこう)との問答に基づく言葉です。

子貢は孔子に、「孔文子(こうぶんし)は、なぜ『文』と呼ばれるようになったのでしょうか」と尋ねました。孔文子は、春秋時代の衛(えい)の国で大夫(たいふ)を務めた人物で、名を圉(ぎょ)といい、「文」は死後に贈られた諡(おくりな)でした。

諡とは、亡くなった人の生前の行いや功績をもとに贈られる名です。「文」は、優れた人物に与えられる立派な諡であったため、子貢は、孔文子のどのような行いがその名にふさわしいのかを尋ねたのです。

孔子は、「敏而好学、不恥下問、是以謂之文也」と答えました。「頭の働きが速く、それでも学ぶことを好み、自分より下の立場にいる人に尋ねることを恥じなかった。だから『文』と呼ばれたのだ」という意味です。

ここでいう「敏」は、物事をすばやく理解できることを表します。「下問」は、自分より年齢・身分・地位などが下の人に質問することです。古い注釈では、理解の速い人は学ぶ努力を怠りやすく、地位の高い人は目下の人に尋ねることを恥じやすいため、賢くありながら学び続け、立場を越えて教えを求めることは難しいと説いています。

南宋の朱熹がまとめた『四書章句集注(ししょしょうくしっちゅう)』には、孔文子には、子貢が疑問を抱くような行いもあったという古い解釈が記されています。それでも孔子は、その人物の長所まで消し去ることなく、「学問を好み、下問を恥じなかった」という一点を正しく評価しました。

この問答は、立派な人物とは何でも知っている人ではなく、自分の知らないことを認め、相手の立場にこだわらず学べる人であることを示しています。知識の多さだけでなく、教えを受けるときの謙虚さも、人を評価する大切な徳として扱われているのです。

なお、『論語』の原文にあるのは「不恥下問」であり、この章句には「君子」という言葉は出てきません。日本語の「君子は下問を恥じず」は、孔文子について述べた孔子の言葉を、徳のある立派な人が備えるべき態度として広く言い表した形です。

室町時代の『応永本論語抄(おうえいぼんろんごしょう)』(1420年)にも、この章を解く中で、「孔文子はさしてもない者也と思て」とあり、子貢が孔文子の諡に疑問をもった事情が語られています。『論語』のこの問答は、日本でも古くから読み継がれ、人物の欠点だけを見るのではなく、優れた点を公平に認める教えとしても受け止められてきました。

大正時代には、渋沢栄一が『実験論語処世談』の中で、「下問を恥ぢぬ」とは、平たくいえば「知らぬ事は誰にでも聞く」ことだと述べています。地位が高くなるほど、知らないことを目下の人に尋ねるのは難しくなりますが、それを実行できるところに人物の大きさが表れると説きました。

このように、「君子は下問を恥じず」は、単に分からないことを質問すればよいというだけの言葉ではありません。年齢や役職、経験の差によって相手を軽く見ず、誰からでも学ぼうとする謙虚な姿勢こそ、立派な人物に欠かせないという教えです。

「君子は下問を恥じず」の使い方

健太
パソコンの操作方法が分からなくて困っていたら、下級生の子がとても詳しく教えてくれたんだ。
ともこ
年下の人に教えてもらうのって、少し照れくさかったりしなかった?
健太
最初は少し恥ずかしかったけれど、まさに君子は下問を恥じずだと思って、思い切って聞きに行って本当によかったよ!
ともこ
自分のプライドより学ぶ気持ちを大切にした健太くんは、とても素敵だね!

「君子は下問を恥じず」の例文

例文
  • 六年生の委員長は、君子は下問を恥じずと考え、機械に詳しい下級生に操作方法を尋ねた。
  • 父は君子は下問を恥じずを心に留め、スマートフォンの使い方を子どもに教わった。
  • 監督は君子は下問を恥じずの姿勢で、若い選手から新しい練習方法について意見を聞いた。
  • 社長は君子は下問を恥じずを実践し、現場の仕事に詳しい新人にも積極的に質問した。
  • 経験豊かな職人であっても、君子は下問を恥じずの心で若い技術者から新しい技法を学んだ。
  • 先生は君子は下問を恥じずという言葉どおり、昆虫に詳しい児童に珍しい幼虫の名前を尋ねた。

主な参考文献

・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・『論語』
・何晏集解、邢昺疏『論語注疏』。
・朱熹『四書章句集注』南宋。
・『応永本論語抄』1420年。
・渋沢栄一『実験論語処世談』実業之世界社、1922年。




講談社刊行・全3冊

運営者・北澤篤史の著書

ことわざ・四字熟語・漢字熟語を、マンガで楽しく学べる図鑑シリーズです。

※Amazon・楽天の購入先にはアフィリエイトリンクが含まれます。

マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉の表紙
ことわざ

マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉

試験によく出ることわざを、マンガと解説で楽しく学べる一冊。

マンガでわかる おもしろ四字熟語図鑑〈試験に出る〉の表紙
四字熟語

マンガでわかる おもしろ四字熟語図鑑〈試験に出る〉

四字熟語をマンガで理解し、意味・漢字・使い方を覚えたい人へ。

マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑の表紙
漢字熟語

マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑

似た意味・同じ読みの漢字熟語の違いを、マンガと用例で学べる一冊。