【故事成語】
燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや
【読み方】
えんじゃくいずくんぞこうこくのこころざしをしらんや
【意味】
小人物には、大人物の大きな志や考えを理解することができないというたとえ。


【英語】
・Swallows and sparrows cannot understand the aspirations of phoenixes and swans(小さな鳥には大きな鳥の志は分からない)
・Only a hero can understand a hero(英雄だけが英雄を理解できる)
【類義語】
・燕雀安んぞ大鵬の志を知らんや(えんじゃくいずくんぞたいほうのこころざしをしらんや)
・鷽鳩鵬を笑う(がくきゅうほうをわらう)
・鴻鵠の志(こうこくのこころざし)
「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の故事
「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」は、中国前漢の司馬遷がまとめた歴史書『史記(しき)』の「陳渉世家(ちんしょうせいか)」に由来します。『史記』は、黄帝から前漢の武帝までの歴史を記した全百三十巻の紀伝体の史書です。
この言葉の中心となるのは、陳勝(ちんしょう)という人物です。陳勝は字を渉といい、そのため陳渉とも呼ばれます。
『史記』には、陳渉が若いころ、人に雇われて耕作していたことが記されています。身分の高い家に生まれた人物ではなく、貧しい暮らしの中で働いていた人物として描かれています。
あるとき陳渉は、耕す手を止めて畑のあぜに行き、しばらく思い悩んだあと、「もし富貴の身になっても、互いに忘れないでいよう」と言いました。これは、今の境遇のままで終わるつもりはないという、強い思いを含む言葉です。
一緒に働いていた人々は、その言葉を聞いて笑いました。人に雇われて耕している者が、どうして富貴になれるのか、という反応でした。
そのとき陳渉は、ため息をつき、「嗟乎、燕雀安知鴻鵠之志哉」と言いました。これを日本語に読み下した形が、「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」です。
「燕雀」は、つばめやすずめのような小さな鳥を表します。「鴻鵠」は、おおとりやくぐいのような大きな鳥を表し、そこから大人物のたとえにもなりました。
つまりこの言葉は、小さな鳥には大きな鳥の飛び方や志が分からないように、狭い考えの人には遠大な志をもつ人の思いは理解できない、という意味を表します。単に相手を悪く言うだけでなく、まだ形になっていない大きな目標が笑われる場面を背景にもっています。
のちに陳勝は、呉広(ごこう)とともに秦末の反乱を起こしました。この反乱は秦の滅亡につながる大きな動きの一つとなり、陳勝の名は歴史に残ることになりました。
この後の行動を知ると、若いころに笑われた陳渉の言葉は、ただの大げさな言い方ではなく、後の歴史を先取りするような言葉として読むことができます。そのため、この故事成語には、まだ理解されていない大きな志を胸に抱く人の姿が重なっています。
ただし、現代で使うときは、人を見下す響きが出やすい言葉でもあります。自分の夢や目標を励ます言葉として用いる場合でも、相手を傷つける言い方にならないよう、場面を選ぶことが大切です。
「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の使い方




「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の例文
- 新しい研究に挑む彼を周囲は笑ったが、燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやという状況だった。
- 町の小さな店から全国展開を目指す計画を聞き、燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやという言葉を思い出した。
- 友人の大きな夢を軽く見る人に対して、燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやと感じた。
- まだ成果が出ていない段階で努力を笑うのは、燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやそのものだ。
- 若い社員の大胆な提案は否定されたが、上司は燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやと受け止めた。
- 世界を変える発明も、最初は燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやと言われるような夢から始まる。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・金岡照光編『三省堂 中国故事成語辞典 ワイド版』三省堂、2010年。
・司馬遷『史記』前漢。
・Electronic Dictionary Research and Development Group『JMdict』。























