【ことわざ】
金の切れ目が縁の切れ目
【読み方】
かねのきれめがえんのきれめ
【意味】
金銭によって成り立っている人間関係は、金がなくなれば終わるということ。


【英語】
・When poverty comes in at the door, love flies out of the window.(貧困が戸口から入ると、愛は窓から逃げていく)
【類義語】
・愛想尽かしも金から起きる(あいそづかしもかねからおきる)
【対義語】
・糟糠の妻は堂より下さず(そうこうのつまはどうよりくださず)
「金の切れ目が縁の切れ目」の語源・由来
「金の切れ目が縁の切れ目」の「金」は、金銭を指します。「切れ目」は、それまで続いていたものが途絶える所や尽きる時を表し、「縁」は、人と人との関係や付き合いを指します。
前半の「金の切れ目」と後半の「縁の切れ目」を同じ形で重ねることにより、金銭が尽きる時と人間関係が終わる時とを、ぴたりと結び付けています。短く調子のよい言い回しの中に、利益だけで結ばれた関係のもろさが表れています。
このことわざは、花柳の巷(かりゅうのちまた)から出た句と伝えられています。花柳の巷とは、遊郭(ゆうかく)や芸者などのいる町を指す言い方です。
こうした場所では、客と、そこで働く人との付き合いに金銭が深く関わっていました。客に金がある間は親しく迎えられても、金を使えなくなれば付き合いも終わるという世間の冷たさを、このことわざは鋭く言い表しています。
「花柳」が色里や花柳界を表す古い例は、山東京伝作、歌川豊国画の読本『昔話稲妻表紙(むかしがたりいなずまびょうし)』(1806年・江戸時代後期)にもあり、「花柳の鞘当」という形で使われています。ここでの「花柳」は、花と柳そのものではなく、色里を意味します。
ただし、この用例は「花柳」という言葉の歴史を示すものであり、「金の切れ目が縁の切れ目」という全文が、江戸時代の同作品に出てくるわけではありません。ことわざの背景となった社会と、現在の形による古い書き言葉の用例とは、分けて考える必要があります。
現在と同じ形の早い実例には、太宰治の小説『人間失格』(昭和23年、太宰治著)があります。第三の手記に、「金の切れ目が、縁の切れ目、って、本当の事だよ」と出てきます。
この場面では、主人公がお金をたくさん欲しいと口にし、自分を支える金がなくなれば、人との関係も保てなくなるという不安を表しています。相手はこの言い方を「古くさい」と受け止めており、昭和23年には、すでに昔からある決まり文句として通じていたことがうかがえます。
このことわざは、特に男女の関係について使われてきました。しかし、現在では男女に限らず、金銭上の利益によって結ばれている一般の付き合いにも広く用いられます。
大切なのは、単に金の貸し借りでけんかをしたという意味ではないことです。もともと金銭や利益を土台として続いていた関係が、その利益を得られなくなったために終わる場合に当てはまります。
金がなくなった途端に人が離れていく姿を通して、このことわざは、人情の薄さや利害だけで結ばれた関係の頼りなさを表します。人との縁は金だけで保たれるものではないという戒めも含んだ、やや皮肉で冷ややかな言い方です。
「金の切れ目が縁の切れ目」の使い方




「金の切れ目が縁の切れ目」の例文
- 事業に失敗した途端、取り巻きが一人も来なくなり、彼は金の切れ目が縁の切れ目を思い知った。
- 長年援助していた親戚への送金をやめると連絡まで途絶え、金の切れ目が縁の切れ目となった。
- 高価な贈り物を買えなくなった途端に恋人が去り、まさに金の切れ目が縁の切れ目だった。
- 会社からの協賛金がなくなると、それまで親しげだった団体も離れ、金の切れ目が縁の切れ目のような結末を迎えた。
- 財産を失っても支えてくれた友人のおかげで、彼は世の中が必ずしも金の切れ目が縁の切れ目ではないと知った。
- 利益がある間だけ近寄ってくる相手とは、いずれ金の切れ目が縁の切れ目になるおそれがある。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・小学館編『日本大百科全書 第二版』小学館、1994年。
・太宰治『人間失格』筑摩書房、1948年。
・Jennifer Speake, ed., The Oxford Dictionary of Proverbs, 6th ed., Oxford University Press, 2015.























