【ことわざ】
木仏金仏石仏
【読み方】
きぶつかなぶついしぼとけ
【意味】
人情や風流を解さず、情に動かされない人、また融通のきかない人のたとえ。


【英語】
・have a heart of stone.(思いやりや同情を示さない)
【類義語】
・石部金吉金兜(いしべきんきちかなかぶと)
・木の股から生まれる(きのまたからうまれる)
・木石漢(ぼくせきかん)
【対義語】
・人木石に非ず(ひとぼくせきにあらず)
「木仏金仏石仏」の語源・由来
「木仏金仏石仏」は、「木仏」「金仏」「石仏」を並べた言い方です。木仏は木を彫って作った仏像、金仏は金属製の仏像、石仏は石で作った仏像を指します。
三つはいずれも人の形をしていますが、人のように心を動かしたり、相手の言葉に応じたりするものではありません。そのため、情に動かされない人を、木・金属・石でできた仏像に重ねて表すようになりました。
この表現の背景には、「木石(ぼくせき)」という古い比喩も重なっています。「木石」は、もとは木と石のことですが、転じて、人間としての情を解さないもののたとえにもなりました。
『三教指帰(さんごうしいき)』(797年ごろ・平安時代初期、空海著)には、「形殊禽獣、何同木石」という形で「木石」が出てきます。人の姿は鳥や獣とは違うのに、どうして木や石と同じであってよいだろうか、という趣旨で、人間らしさと木石とを対比する言い方です。
「金仏」は、金属で作った仏像という意味から、心のきわめて冷たい人、感情に動かされない人のたとえにも用いられました。江戸時代中期の雑俳『蓍萩』(1735年)には、「金仏に猶心猿が手をのばす」という用例があり、金仏が心の動きに関わる比喩として使われていたことが分かります。
また、石仏も、石で作った仏像という意味のほか、感情を容易に外へ表さない人、また口数の少ない人を指す言葉として使われました。石の硬さや動かなさが、人の心の動きの少なさに重ねられたのです。
『閑情末摘花(かんじょうすえつむはな)』(1839〜1841年・江戸時代後期、松亭金水作)には、「たとへ金仏、石地蔵、木で造った閻魔でも」という一節が出てきます。金属・石・木でできた像を並べ、動かしにくいもの、心を動かさないものとしてたとえる発想が、江戸時代の文章にも表れています。
「木仏金仏石仏」というまとまった形の古い用例は、『開化のはなし』(1879年・明治時代前期、辻弘想著)に出てきます。そこには「木仏金仏石仏も、情の無きは誉めた咄しではない」という趣旨の言葉があり、情に動かされないことを、決してよいことではないとして述べています。
この用例では、単に「冷たい人」と言うだけでなく、木・金属・石の仏像を三つ重ねることで、心の動かなさを強めて表しています。同じような意味をもつ「木石漢」や「木の股から生まれる」も、木や石を、人情を解さないもののたとえに用いる発想から成り立っています。
一方で、「人木石に非ず」という反対の発想をもつ言い方もあります。これは、人には木や石とは違って喜怒哀楽の感情があるという意味で、木や石を「情をもたないもの」と見る考えをよく示しています。
現在の「木仏金仏石仏」は、冷淡で人情味のない人、また、きまじめすぎて融通のきかない人をいうことわざとして使われます。ただし、人に向けて用いると強い批判や皮肉になりやすいため、相手を傷つけないように注意が必要です。
「木仏金仏石仏」の使い方




「木仏金仏石仏」の例文
- 友人が泣いて頼んでも少しも態度を変えない彼は、木仏金仏石仏のような人だ。
- 規則を守ることは大切だが、事情をまったく聞かない木仏金仏石仏では周囲が困る。
- 祖父は昔から木仏金仏石仏で、家族がお願いしても予定をめったに変えない。
- 部長は木仏金仏石仏のように厳しく、どんな理由があっても締め切りの延長を認めなかった。
- 人の気持ちに気づかない木仏金仏石仏では、相談を受ける立場は務まらない。
- いつも冷静なのはよいが、木仏金仏石仏と呼ばれるほど無関心に見えては誤解を招く。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus.』
・空海『三教指帰』797年ごろ。
・『蓍萩』1735年。
・松亭金水『閑情末摘花』1839〜1841年。
・辻弘想『開化のはなし』博文堂、1879年。























