【ことわざ】
有るは借銭、無いは金
【読み方】
あるはしゃくせん、ないはかね
【意味】
借金だけはあるのに、手元の金はなく、金銭にひどく困っていること。


【類義語】
・有るは借金、無いは金(あるはしゃっきん、ないはかね)
・首が回らない(くびがまわらない)
・火の車(ひのくるま)
「有るは借銭、無いは金」の語源・由来
「有るは借銭、無いは金」は、手元に「有る」ものと「無い」ものを並べ、普通なら逆であってほしい状態を皮肉に表したことわざです。「借銭(しゃくせん)」は、借りた金銭、つまり借金・借財・負債を指す言葉ですから、「有るは借銭」は、持っているものが財産ではなく返すべき借りであることを示します。
この言い方の土台にある古い表現として、江戸時代中期の浄瑠璃『平仮名盛衰記(ひらがなせいすいき)』(1739年初演)に、「いづくの浦でもない物は金とばけ物。有物は質の札と借銭」という一節が出てきます。『平仮名盛衰記』は、元文四年、竹本座で上演された五段の時代物浄瑠璃で、源平の物語をもとにした作品です。
この一節では、「ない物」は金とばけ物、「有物」は質の札と借銭だと述べています。つまり、ありそうで実際には手元にないものが金で、逆に手元に残っているものは、質に入れた証しの札や借金ばかりだ、という意味になります。「質札(しちふだ)」は、質屋が質を入れた人に出す証券で、品物を受け出すときに返す札を指します。
この古い言い回しには、現在の「有るは借銭、無いは金」とほぼ同じ骨組みがあります。金は必要なのに無く、借銭や質札のように困った証拠だけが有る、という対照です。笑いを含んだ言い方ではありますが、内容は軽い冗談ではなく、生活や商売のやりくりが苦しい状態をよく表しています。
現在の形では、「質の札」の部分が落ち、「有るは借銭、無いは金」と、借金と現金の対比がさらに短く整っています。そのため、単にお金が少ないという意味ではなく、返さなければならない負債はあるのに、返済や支払いに使える金がないという、より切実な金銭の苦しさを表すことわざとして用いられます。
「有るは借銭、無いは金」の使い方




「有るは借銭、無いは金」の例文
- 店の売り上げが落ち、支払いだけが残って、有るは借銭、無いは金の状態になった。
- 家計簿を見直すと、返済予定ばかり多く、有るは借銭、無いは金だと分かった。
- 急な修理代を借りて払ったため、月末には有るは借銭、無いは金となった。
- 友人に見栄を張って外食を続けた結果、有るは借銭、無いは金になってしまった。
- 会社は大きく見えても、内情は有るは借銭、無いは金で、資金繰りに苦しんでいた。
- 収入が入る前に支払いが重なり、有るは借銭、無いは金という苦しい月になった。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・文耕堂ほか『ひらかな盛衰記』1739年。























