【ことわざ】
風見の烏
【読み方】
かざみのからす
【意味】
お高くとまって威張っているさま。また、風向きに従う風見のように、くるくるとよく回るさまのたとえ。


【英語】
・look down one’s nose at others.(人を見下して高慢に振る舞う)
・spin like a weather vane.(風見のようにくるくる回る)
【類義語】
・お高くとまる(おたかくとまる)
【対義語】
・腰が低い(こしがひくい)
「風見の烏」の語源・由来
「風見」は、屋根などの高い所に取り付け、風が吹いてくる方向を知るための道具です。古くは、その先に鳥や獣、家の紋などをかたどった飾りを付けました。
「風見の烏」は、烏の姿を金属や木でかたどった風見を指します。高い所に取り付けられ、風を受けると向きを変えて回るため、その形と動きから二つのたとえが生まれました。
日本では、江戸時代、烏をかたどった風見が用いられていました。屋根の上から下を見下ろす姿は、気位が高く、澄ました顔で人を見下す者の姿と重なります。
一方、風見は一定の方向を向いたままではなく、風を受けると軸を中心に回転します。この性質から、舌や物などがくるくるとよく回ることのたとえにもなりました。
古い用例は、歌舞伎『助六廓夜桜(すけろくくるわのよざくら)』(1779年初演・江戸時代中期、桜田治助・笠縫専助作)に出てきます。この作品には、「此の舌が廻って来たぞ〈略〉風車、独楽にぶん廻しに風見のからす」とあります。
ここでは、話し手の舌が滑らかに回り始めた様子を、風車や独楽(こま)と並べて、「風見のからす」にたとえています。この段階では、高慢な態度ではなく、よく回るという風見の動きが、たとえの土台になっています。
その後、『諢話浮世風呂(おどけばなしうきよぶろ)』(1809〜1813年・江戸時代後期、式亭三馬著)には、「風見の烏を見るやうに、高くとまってすまアして居るも小癪に障らア」とあります。
この場面では、高い所にとまって澄ましている烏の姿が、人に対して気取った態度を取る者に重ねられています。「高くとまる」という言い方も加わり、現在の「お高くとまる」という意味がはっきりと表れています。
明治時代の二葉亭四迷『浮雲(うきぐも)』(明治20〜24年刊)にも、「風見の烏みたように高くばッかり止まッて」という形が出てきます。高い位置から周囲を見下ろす姿を、尊大で近寄りにくい態度のたとえとして用いた例です。
このように、「風見の烏」は、江戸時代にはすでに、風を受けてよく回るという動きと、高い所で澄ましているという姿の両面から使われていました。現在も、この二つの意味が受け継がれています。
なお、「風見鶏」は、情勢や権力者の意向に合わせて立場を変える人のたとえとしても使いますが、「風見の烏」は、もともと、単にくるくるとよく回る様子をも表します。両者は似ていますが、意味が完全に同じではありません。
「風見の烏」の使い方




「風見の烏」の例文
- 彼は代表に選ばれた途端、風見の烏のようにお高くとまって友人を見下すようになった。
- 有名店で働いていることを誇る彼女は、風見の烏さながらの澄ました態度を取った。
- 少し褒められただけで風見の烏になるようでは、周囲から信頼されない。
- 話題を得た司会者の舌は、風見の烏のようにくるくるとよく回った。
- 強い風が吹くと、屋根の飾りは風見の烏のように勢いよく回った。
- 踊り手は風見の烏さながらに身を回し、観客から大きな拍手を受けた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』全3巻、小学館、2005〜2006年。
・桜田治助・笠縫専助『助六廓夜桜』1779年初演。
・式亭三馬『諢話浮世風呂』1809〜1813年。
・二葉亭四迷『浮雲』1887〜1891年。























