【慣用句】
風の吹き回し
【読み方】
かぜのふきまわし
【意味】
その時々の模様やはずみによって一定しないこと。また、普段とは違うことが思いがけず起こったときの具合や拍子。


【英語】
・What’s gotten into you?(どういう風の吹き回し、どうしたのかという驚き)
・out of the blue.(思いがけなく、突然)
【類義語】
・物の弾み(もののはずみ)
・間拍子(まびょうし)
【対義語】
・終始一貫(しゅうしいっかん)
・首尾一貫(しゅびいっかん)
「風の吹き回し」の語源・由来
「風の吹き回し」は、風の吹きぐあいや風向きの変化をもとに、人の態度や物事のなりゆきが一定しないことを表すようになった慣用句です。「吹き回し」には、風の吹きぐあい、風向きの変化、その時の調子や気分という意味があります。
「風」は、もともと空気の流れを指す言葉です。その一方で、古くから「なりゆき」「形勢」「様子」などを表す意味にも広がって使われてきました。
この慣用句では、目に見えない風が、その時々で向きを変えたり、強さを変えたりする様子がもとになっています。人の気分や態度、物事の成り行きも、風の向きのように思いがけず変わることがあるため、その変化を「風の吹き回し」と表します。
「吹き回し」という言葉は、単独でも風に関わる具体的な意味をもっています。風の吹きぐあい、風向きの変化のほか、風が吹くと回るもの、つまり風車のようなものも指します。
洒落本(しゃれぼん)『恵世ものかたり』には、「―のかんざしにて頭をかきかき来る」という用例があります。ここでの「吹き回し」は、風が吹くと回る飾りに近い、具体的な意味で使われています。
このような具体的な「吹き回し」の意味から、しだいに「その時の調子」「その時の気分」という抽象的な意味が生まれました。風の向きが変わるように、人の心や行動の向きも変わる、という比喩が成り立ったのです。
「風の吹き回し」という形の古い用例としては、樋口一葉の『別れ霜』(1892年・明治25年、樋口一葉著)五に、「今日の御入来は如何(どう)いふ風の吹きまはしか」とあります。普段とは違う来訪に対して、どうしたはずみなのかと驚く場面の言い方です。
この用例では、「風の吹きまはし」という旧仮名の形で、現在とほぼ同じ意味に用いられています。つまり、明治時代にはすでに、思いがけない行動や普段と違う態度を表す言い方として定着していたことが分かります。
現在では、「どういう風の吹き回しか」の形でよく使われます。この形では、普段はあまり起こらないことが急に起こったさま、どうしたはずみか分からないさまを表します。
ただし、この慣用句は強い非難だけを表す言葉ではありません。相手の珍しい親切、急な訪問、気まぐれな変化などに対して、驚きや不思議さをやわらかく表す言葉としても使われます。
「風の吹き回し」の使い方




「風の吹き回し」の例文
- いつも早起きが苦手な弟が朝食を作っていて、どういう風の吹き回しかと家族が驚いた。
- 部長が突然全員に差し入れを配ったので、社員たちは風の吹き回しだと思った。
- 普段は静かな友人が自分から発表に立候補し、何の風の吹き回しかと先生も目を丸くした。
- 父が急に部屋の片づけを始めたのは、どういう風の吹き回しだろう。
- あの店が急に値引きを始めたのは、売れ行きの風の吹き回しによるものかもしれない。
- いつも反対ばかりする人が賛成に回ったので、会議室では風の吹き回しを不思議がる声が出た。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、1991年。
・樋口一葉『別れ霜』1892年。
・Cambridge University Press『Cambridge Learner’s Dictionary.』























