【ことわざ】
お仕着せの長口上
【読み方】
おしきせのながこうじょう
【意味】
型どおりの決まりきった言葉を、長々と述べること。また、その長い文句。


【英語】
・a long, formulaic speech(型どおりの長い話)
【類義語】
・決まり文句(きまりもんく)
・紋切り型(もんきりがた)
「お仕着せの長口上」の語源・由来
「お仕着せの長口上」は、「お仕着せ」と「長口上」とを結び付けた言い方です。「お仕着せ」は型どおりのものを、「長口上」は長々と話すことを表し、二つが重なることで、決まりきった長い文句という意味になります。
「仕着せ」は、もともと主人が奉公人に、季節に応じて衣服を与えること、また、その衣服を指しました。江戸幕府が役人に支給した衣服にも用いられ、「為着せ」「四季施」とも書きます。
古い用例として、『本光国師日記(ほんこうこくしにっき)』(1610〜1633年・江戸時代前期、以心崇伝著)の慶長16年、1611年の記事に、「内者しきせの小袖布子以下持来」とあります。ここでの「しきせ」は、小袖や布子など、奉公人に与える衣服そのものを表しています。
井原西鶴の俳諧句集『西鶴大矢数(さいかくおおやかず)』(1681年・江戸時代前期、井原西鶴著)には、「おしきせの袖打はらふ影もなし」とあります。この段階でも、「おしきせ」は主人から与えられた衣服という具体的な意味で使われています。
一方、同じ江戸時代前期には、「お仕着せ」が衣服以外の物事にも意味を広げ始めます。井原西鶴の浮世草子『好色一代女(こうしょくいちだいおんな)』(1686年・江戸時代前期、井原西鶴著)には、「お仕着の通り」という形があり、習慣どおり、いつもの型どおりという意味で用いられています。
さらに、『新撰大阪詞大全』(1841年・江戸時代後期)には、「しきせとは、おぼえたより外に気のきかぬこと」とあります。覚えたこと以外に工夫が利かないという説明であり、「仕着せ」が、決まりきった型から出ない言動を表す段階へ進んでいたことが分かります。
主人から与えられる衣服は、奉公人が自分の好みで自由に選ぶものではありませんでした。そのため「お仕着せ」は、あらかじめ決められたもの、型どおりに与えられるものを表し、やがて言葉や行動にも用いられるようになりました。
「口上」は、口頭で相手に伝える言葉を指します。また、型にはまった挨拶の言葉や、歌舞伎などの興行で出演者が観客に述べる挨拶も「口上」と呼びます。
「長口上」は、口上や話が長々と続くことです。古い用例として、役者について記した評判記『新野郎花垣』(1674年・江戸時代前期)に、「なが口上なとよくいわれよし」とあります。
この「長口上」に、型どおりで新味のないことを表す「お仕着せ」が付くと、単に時間の長い話ではなく、聞き慣れた決まり文句を長々と並べる話を指すようになります。内容に合わせて自分の言葉で話すのではなく、用意された型をそのまま繰り返すところが、このことわざの要点です。
現在の「お仕着せ」には、上の立場から一方的に与えられるという意味もあります。ただし、「お仕着せの長口上」では、無理に押し付けることよりも、型どおりで決まりきっていることに重点があります。
したがって「お仕着せの長口上」は、長いというだけでなく、話す場面が変わっても同じ言葉を並べ、聞き手に新しい内容が伝わらないような話を表します。衣服を一律に与える「仕着せ」から、型にはまった長話へと意味を広げたことわざです。
「お仕着せの長口上」の使い方




「お仕着せの長口上」の例文
- 司会者のお仕着せの長口上が続き、肝心の表彰式がなかなか始まらなかった。
- 毎年同じ訓示を繰り返す社長の話は、お仕着せの長口上になっていた。
- 祝辞がお仕着せの長口上では、主役を心から祝う気持ちが伝わりにくい。
- 父は説教を始めると、いつものお仕着せの長口上を一通り述べずには終わらない。
- 形式だけを重んじたお仕着せの長口上より、短くても自分の言葉で話す方が心に届く。
- 会議の冒頭にお仕着せの長口上を省いたため、予定より早く本題に入れた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・以心崇伝『本光国師日記』1610〜1633年。
・『新野郎花垣』1674年。
・井原西鶴『西鶴大矢数』1681年。
・井原西鶴『好色一代女』1686年。
・『新撰大阪詞大全』1841年。























