【ことわざ】
損して得取れ
【読み方】
そんしてとくとれ
【意味】
一時的には損をしても、長い目で見て大きな利益や信頼を得るようにせよ、という教え。


【英語】
・You have to spend money to make money(利益を得るには先にお金を使う必要がある)
・Lose a sprat to catch a mackerel(小魚を失って大きな魚を得る)
【類義語】
・損は儲けの始め(そんはもうけのはじめ)
・損せぬ人に儲けなし(そんせぬひとにもうけなし)
・負けるが勝ち(まけるがかち)
【対義語】
・安物買いの銭失い(やすものがいのぜにうしない)
・小利大損(しょうりだいそん)
「損して得取れ」の語源・由来
「損して得取れ」は、「損」と「得」という日常の損得勘定をもとにしたことわざです。はじめに少し不利なことを受け入れても、それが後の大きな利益につながるなら、長い目で見てそちらを選ぶべきだという考えを表しています。
古い形としては、「損て得とる」という言い方が伝わっています。この形は、一時的には損をしても、それをもとに将来の大きな利益を考える、という意味で用いられていました。
この表現は、『俚言集覧(りげんしゅうらん)』に見えるものとして伝えられています。『俚言集覧』は、江戸時代後期に太田全斎が編んだ国語辞書で、俗語や俗諺(ぞくげん:世間で使われることわざ)などを集めた書物です。成立は1797年から1829年までの間と考えられています。
ここで大切なのは、このことわざが、単に「損をすればよい」と教えているのではない点です。「損」は目的ではなく、後の得につなげるための手段です。目の前のわずかな利益だけを追うのではなく、相手の信用を得る、よい関係を作る、あとで大きな成果につなげる、という見通しが含まれています。
近代の用例としては、織田作之助の『夫婦善哉』(1940年・昭和15年初出)に、このことわざに近い形が出てきます。作品の中では、商売の場面で、切り分けた品で客を引きつけ、まるごとの品で利益を出すという考えとともに、「損して得とれや」という言い方が使われています。
この用例は、「損して得取れ」が商いの感覚と深く結びついていることをよく示しています。目先では安く売ったり、手間をかけたりして損に見えても、それによって客の心をつかみ、あとで大きな利益につなげるという考え方です。
表記の面では、「損て得とる」「損して得とれ」「損して得取れ」のように、言い方や書き方に少し違いがあります。しかし、中心にある意味は共通しており、一時の損を将来の利益へつなげるという発想です。現在では、商売だけでなく、勉強や仕事、友人関係、地域活動などにも広く使われることわざになっています。
つまり、「損して得取れ」は、目先の小さな損得だけで判断しないことを教えることわざです。先のことまで見通して行動すれば、一見損に思えることが、後に信用や成果となって返ってくることがあります。
「損して得取れ」の使い方




「損して得取れ」の例文
- 店主は不良品をすぐに交換し、損して得取れの姿勢で客の信頼を守った。
- 新しい教室イベントでは、損して得取れと考えて、最初に必要な道具を多めにそろえた。
- 会社は修理代を自社で負担し、損して得取れによって長い取引先との関係を大切にした。
- 地域の祭りで無料の案内地図を配ったのは、損して得取れを考えた町内会の工夫だった。
- 友人のために時間を使うことは一見損に思えても、損して得取れで、深い信頼につながることがある。
- 目先の利益だけを追わず、損して得取れの考えで、まず利用者に役立つサービスを整えた。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・平凡社『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・太田全斎編『俚言集覧』1797年以後1829年以前成立。
・織田作之助『夫婦善哉』1940年。






















