【ことわざ】
思えば思わるる
【読み方】
おもえばおもわるる
【意味】
こちらが相手のことを思っていれば、相手もこちらを思うようになるということ。


【英語】
・Love begets love(愛は愛を生む)
【類義語】
・魚心あれば水心(うおごころあればみずごころ)
【対義語】
・片思い(かたおもい)
「思えば思わるる」の語源・由来
「思えば思わるる」は、こちらが相手に好意を寄せれば、やがて相手もこちらに好意を寄せるようになるという、人の心の結び付きを表したことわざです。「思う」という言葉は、単に頭で考えるだけでなく、人を恋しく思う、慕う、愛するという意味でも、古くから使われてきました。そのため、このことわざの「思う」には、相手を大切にし、心を寄せるという意味が込められています。
古い収録例としては、『諺苑(げんえん)』(1797年・江戸時代後期、太田全斎著)に、このことわざが出てきます。『諺苑』は、江戸時代に用いられていた言葉や言い回しを集めた書物であり、のちに『俚言集覧(りげんしゅうらん)』へと改編されました。「思えば思わるる」がそこに収められていることから、遅くとも江戸時代後期には、人の心の通い合いを表す言い方として知られていたことが分かります。
「思わるる」は、現代ではあまり用いられない文語的な形です。古語の動詞「思ふ」の未然形(みぜんけい)である「思は」に、受身(うけみ)の助動詞「る」の連体形(れんたいけい)である「るる」が付いています。助動詞「る」は現代語の「れる」に当たるため、「思わるる」は「相手から思われる」、つまり「相手もこちらを思ってくれる」という意味になります。
したがって、言葉の形をそのままほどくと、「こちらが相手を思えば、こちらも相手から思われる」となります。同じ動詞を、能動の「思えば」と受身の「思わるる」にして重ねることで、こちらから相手へ向かった思いが、相手からこちらへ返ってくる様子を、短く調子よく言い表しています。
昭和14年(1939年)に発表された太宰治の『困惑の弁』では、若者への恋の忠告の中に、「思えば、思われる。それを信じて、のんきにして居れ」とあります。ここでは、古い「思わるる」が現代に近い「思われる」という形になっていますが、相手を思い続ければ、その思いは相手からも返されるという意味は変わっていません。
もともとは、恋愛について使われることの多いことわざですが、現在では友情や日常の人間関係にも用いられます。自分から相手を気に掛け、誠実に接することで、その気持ちが相手にも伝わり、同じような思いやりが返ってくるという、人間関係のあり方を表す言葉です。
「思えば思わるる」の使い方




「思えば思わるる」の例文
- 思えば思わるるというように、彼女を大切にしてきた気持ちは、いつしか彼女の心にも届いた。
- 親友が困ったときにはいつも力を貸していたので、思えば思わるるで、自分が悩んだときにも親身になってくれた。
- 思えば思わるるという言葉どおり、祖母を気遣う孫は、祖母からも深い愛情を注がれている。
- 隣人にいつも温かく接してきた結果、思えば思わるるで、留守の間も家のことを気に掛けてもらえた。
- 部下の成長を心から願う上司は、思えば思わるるで、部下たちからも厚い信頼を寄せられた。
- 地域の人々を大切にする店主の姿勢が、思えば思わるるとなって、多くの常連客を引き付けている。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・太田全斎『諺苑』1797年。
・太宰治『困惑の弁』1939年。























