【ことわざ】
網の目に風たまらず
【読み方】
あみのめにかぜたまらず
【意味】
網を張っても風を防げないように、しても効果がなく、かいのないことのたとえ。


【類義語】
・籠で水を汲む(かごでみずをくむ)
・笊に水を入れる(ざるにみずをいれる)
「網の目に風たまらず」の語源・由来
このことわざは、網という道具の性質から生まれたたとえです。網は、糸や縄などを目がすくように編んで作った道具で、魚や鳥などを捕らえるために使われますが、網の目は糸と糸のすきまなので、風を受け止める壁にはなりません。
「たまらず」のもとになる「たまる」には、一か所に集まってとどまる、または流れずに止まるという意味があります。そのため「風たまらず」は、風が網の目にとどまらず、すきまを通り抜けてしまう情景を表します。
この発想は、和歌の表現として古くから使われました。『古今和歌六帖(こきんわかろくじょう)』(10世紀後半頃・平安時代中期、編者未詳)は、古歌を題ごとに集めた歌集で、「あみのめに吹きくるかぜはとまるとも人の心をいかが頼まん」という歌を収めています。ここでは、風が網の目にとまることさえ考えにくいのに、それ以上に人の心は頼みにしにくい、という言い方になっています。
『散木奇歌集(さんぼくきかしゅう)』(1128年頃・平安時代後期、源俊頼撰)は、源俊頼の歌を集めた十巻の歌集です。この中には「思はんと頼めしことはあみのめにたまらぬ風の心なりけり」という歌が伝わり、頼みにしようとした心が、網の目にとどまらない風のように、つかまえどころのないものとして表されています。
同じ『散木奇歌集』には、「ふきまよふ−かせもとまらぬ−あみのめに−いかてなみたの−うかふなるらむ」という近い形の歌もあります。ここでも「風もとまらぬ網の目」という取り合わせによって、つかまえられないもの、とどめられないものを言い表しています。
江戸時代後期の『諺苑(げんえん)』(1797年、太田全斎著)には、「網の目に風とまる」という形が記録されています。『諺苑』は俗語や俗諺を集めた国語辞書であり、この段階では、和歌の比喩にとどまらず、ことわざとして整理されるほど広く知られていたことが分かります。
現在は、「網目に風たまらず」「網の目に風とまらず」などの形で、網を張っても風は防げない、つまり手間をかけても効果がないことのたとえとして用いられます。「網の目に風たまらず」も同じ筋の表現で、風を網で止めようとするような、目的に合わない方法のむなしさを伝えることわざです。
「網の目に風たまらず」の使い方




「網の目に風たまらず」の例文
- 穴だらけの計画で情報を守ろうとしても、網の目に風たまらずだ。
- 約束の時間を決めずに人を集めようとするのは、網の目に風たまらずというものだ。
- 水をこぼさない対策に目の粗いかごを使うのでは、網の目に風たまらずだ。
- 原因を調べずに注意だけをくり返しても、網の目に風たまらずで同じ失敗が続く。
- 壊れた屋根に薄い網をかけても雨風は防げず、網の目に風たまらずだった。
- 相手に届かない場所へ案内を貼っても、網の目に風たまらずで連絡の役に立たない。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・『古今和歌六帖』10世紀後半頃。
・源俊頼『散木奇歌集』1128年頃。
・太田全斎『諺苑』1797年。























