【ことわざ】
当て事は向こうから外れる
【読み方】
あてごとはむこうからはずれる
【意味】
こちらの都合で当てにしていたことは、相手の都合や思いがけない事情でだめになりやすいということ。自分だけに都合のよい期待を戒める言い方。


【類義語】
・当て事と越中褌は向こうから外れる(あてごととえっちゅうふんどしはむこうからはずれる)
・当て事と畚褌は先から外れる(あてことともっこふんどしはさきからはずれる)
「当て事は向こうから外れる」の語源・由来
このことわざの中心にある「当て」は、行動の目当てや将来の見込み、また心の中で期待している物事や頼りを表す言葉です。古くは『山家集(さんかしゅう)』(平安時代末期、西行の歌を収める私家集)に、行くべき道の「あて」がないという用例があり、さらに室町時代末期から近世初めごろの狂言にも、人を「あてにする」という言い方が出てきます。つまり、「当て事」は、何かを頼みにしたり、期待したりする事柄を表す土台をもつ言葉です。
この表現は、長い形では「当て事と越中褌(えっちゅうふんどし)は向こうから外れる」と言います。越中褌は、長さ一メートルほどの小幅の布に紐をつけたふんどしで、江戸時代の咄本(はなしぼん)『軽口露がはなし(かるくちつゆがはなし)』(1691年・江戸時代前期、露の五郎兵衛作)にも、実際の衣類としての用例が出てきます。
そこから、越中褌の前の部分が外れやすいことをもとに、「あてにしていたことが外れる」という比喩が生まれました。1793年の雑俳には「仕すましたかほ越中褌」という用例があり、ここでは衣類そのものだけでなく、当てが外れる意味へ移っていく表現として使われています。
「向こう」という言葉には、体の前方という意味と、相手・先方という意味が重なっています。越中褌が体の前の方から外れるように、こちらが勝手に当てにしていることも、相手の都合によって外れる、という洒落を含んだ言い方になっています。
短い形の「当て事は向こうから外れる」は、ふんどしのたとえを省き、教訓の部分だけを取り出した言い方です。人を頼ることそのものを禁じる言葉ではなく、相手の事情を考えずに、こちらの期待だけで物事を決めてしまう危うさを示します。
そのため、このことわざは「思いがけない失敗は何でも起こる」という広い意味よりも、「相手が自分の思う通りに動いてくれるはずだ」と決めつけたときに特によく合います。今の使い方では、予定を立てるときには、相手の返事や都合が変わることも見込んでおくべきだ、という落ち着いた戒めとして理解できます。
「当て事は向こうから外れる」の使い方




「当て事は向こうから外れる」の例文
- 兄の車を借りるつもりで旅行の予定を立てたが、急用で使えなくなり、当て事は向こうから外れると思い知った。
- 友人の手伝いを当てにして準備を後回しにしたら、当て事は向こうから外れるという通り、前日に断られた。
- 取引先からすぐ返事が来ると決めて進めた計画は、当て事は向こうから外れるの例になってしまった。
- 親戚から譲ってもらえると思っていた家具が別の人に渡り、当て事は向こうから外れると感じた。
- 役員が全員参加する前提で会場を押さえたが、当て事は向こうから外れるで、半数が欠席になった。
- 当て事は向こうから外れるというから、人の協力を待つだけでなく、自分でできる準備も進めておくべきだ。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・露の五郎兵衛『軽口露がはなし』1691年。























