【故事成語】
老いたるを父とせよ
【読み方】
おいたるをちちとせよ
【意味】
年をとった人を、父のように尊敬せよという教え。


【英語】
・respect your elders(年長者を敬う)
【類義語】
・老いたらんは親とせよ(おいたらんはおやとせよ)
・老いたるを父母(おいたるをふぼ)
「老いたるを父とせよ」の故事
「老いたるを父とせよ」は、中国の古典『礼記(らいき)』にある、年長者への礼を説く言葉をもとにした表現です。『礼記』は、礼儀や儀式、日常のふるまいについて記した儒家の古典で、現行本は四十九篇から成ります。
この表現のもととなる考えは、『礼記』「曲礼(きょくらい)」に出てきます。「曲礼」は、『礼記』の中でも、日々のふるまいや人との接し方について細かく説く篇です。
『礼記』「曲礼」には、「年長以倍則父事之」とあります。これは、自分より年長で、年齢が自分の倍ほどである人には、父に仕えるように接する、という意味です。
この「父事之」の「父事」は、相手を父のように敬って仕えることを表します。つまり、血のつながった父だけでなく、父に近いほど年長の人に対しても、同じような敬意をもって接するべきだ、という教えです。
同じ箇所には、十歳年長の人には兄に仕えるようにし、五歳年長の人には肩を並べず、少し後ろにつき従うようにする、という内容も続きます。年齢の差に応じて、相手への礼の形を変える考えが示されています。
また、五人でともにいるときは、長者には必ず別の席を用意するとあります。これは、年長者をただ心の中で敬うだけでなく、席や立ち居ふるまいにも敬意を表すという、古代中国の礼の考え方を示しています。
『礼記』では、礼を単なる形式とは考えていません。人と人との関係を整え、親子・兄弟・君臣などの間柄を乱さないために、礼が大切だと述べています。
「老いたるを父とせよ」は、この「年長以倍則父事之」という考えを、日本語として短く言い表した形です。もとの文では年齢の差を細かく分けていますが、日本語の表現では、年をとった人を父のように敬う、という分かりやすい教えとして受け取られています。
「老いたる」の「老」は、年をとることや年寄りを意味します。また、物事に通じた年長者や、長い経験を積んだ人を表す場合にも使われます。
この表現で大切なのは、年長者をただ年齢だけで見るのではなく、長く生きてきた人として敬う点です。経験を積んだ人の言葉や態度には、若い人が学ぶべき知恵がある、という考えが含まれています。
ただし、現代では、年上であれば何をしてもよい、という意味には用いません。相手を一人の人として尊重し、年長者にも礼を尽くすという意味で受け取るのが、穏当な使い方です。
現在の「老いたるを父とせよ」は、高齢者や年長者への敬意を説く故事成語として用いられます。身近な年長者に対して、親に接するような思いやりと礼を忘れないことを伝える表現です。
「老いたるを父とせよ」の使い方




「老いたるを父とせよ」の例文
- 老いたるを父とせよという教えを胸に、祖父母だけでなく近所の高齢者にも丁寧にあいさつする。
- バスで席をゆずる行動には、老いたるを父とせよという考えが表れている。
- 地域の行事では、老いたるを父とせよの心で年長者の話をよく聞くことが大切だ。
- 老いたるを父とせよという言葉は、高齢者を見下さず、敬意をもって接する姿勢を教えている。
- 長く町を支えてきた人々に感謝する場面で、老いたるを父とせよという言葉を思い出した。
- 老いたるを父とせよとは、年長者を自分の父のように大切にし、礼を尽くすべきだという教えである。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小林一郎講述『経書大講 第25巻 大學 禮記抄』平凡社、1940年。
・戴聖編『礼記』前漢。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』。























