【故事成語】
機知の巧有れば必ず機知の敗有り
【読み方】
きちのこうあればかならずきちのはいあり
【意味】
すぐれた才知や巧みな考えに頼りすぎると、その才知そのものが原因で失敗すること。


【英語】
・be hoist with one’s own petard.(自分の策で自分が苦しむ)
・be too clever by half.(利口ぶりが過ぎてかえってよくない)
【類義語】
・策士策に溺れる(さくしさくにおぼれる)
・才子才に倒れる(さいしさいにたおれる)
「機知の巧有れば必ず機知の敗有り」の故事
この言葉は、中国古典の『説苑(ぜいえん)』(前漢、成立年未詳、劉向編)に出てくる故事に基づきます。『説苑』は、君主のあり方や人の戒めとなる故事・伝説を、二十巻に分けて集めた説話集です。
『説苑』巻二十「反質」には、衛の五人の男が、水がめを背負って井戸に入り、ニラに水をやっていた話が出てきます。五人は一日かけても、一区画にしか水をやることができませんでした。
そこへ鄧析が通りかかり、車を降りて、もっと楽に水をくみ上げる仕掛けを教えました。その仕掛けは、後ろを重く、前を軽くして動かすもので、一日中水をやれば百区画にも水をやれると述べています。
しかし、五人の男はその助言を受け入れませんでした。男たちは、自分たちの師の言葉として「有機知之巧、必有機知之敗」と言い、巧みな仕掛けや才知には、必ずその才知による失敗もある、と答えました。
男たちは、仕掛けを知らないから使わないのではなく、知っていてもあえて使わないのだ、と述べます。ここでは、便利な方法そのものよりも、それに心を奪われ、物事の本筋を見失う危うさが問題になっています。
この答えを聞いた鄧析は、顔色を変えて不快な様子を示します。弟子が、鄧析のためにその男たちを殺しましょうかと言うと、鄧析はそれを止め、彼らを「真人」と呼んで、国を守らせることもできる人物だと評価します。
この話は、工夫や知恵をまったく否定するものではありません。むしろ、知恵を誇り、便利な仕組みを使いこなしているつもりになったとき、人はその知恵のために、かえってつまずくという戒めを表しています。
古い本文では「機知」と書かれる形があり、また「機智」の形でも伝わっています。「機知」は、その場に応じてすばやく働く才知を表す言葉で、「機智」の書き換えとしても扱われます。
そのため、「機知の巧有れば必ず機知の敗有り」は、もとの故事にあった「機知の巧みさ」と「機知による失敗」という対になる考えを、日本語の訓読調で受け継いだ言い方です。現在では、才知や作戦を過信すると、それがかえって失敗のもとになるという意味で用いられます。
「機知の巧有れば必ず機知の敗有り」の使い方




「機知の巧有れば必ず機知の敗有り」の例文
- 近道ばかり考えて大事な確認を怠った彼の失敗は、機知の巧有れば必ず機知の敗有りを思わせる。
- 巧みな言い訳でその場を逃れようとしたが、発言の矛盾を指摘され、機知の巧有れば必ず機知の敗有りとなった。
- 便利な仕組みを作ったつもりでも、使い方を見誤れば、機知の巧有れば必ず機知の敗有りになりかねない。
- 話し合いで相手を出し抜こうとしすぎ、かえって信頼を失った姿は、機知の巧有れば必ず機知の敗有りそのものだった。
- 試合の作戦を複雑にしすぎて全員が迷い、機知の巧有れば必ず機知の敗有りという結果を招いた。
- 仕事の手順を省く工夫に酔って確認を飛ばせば、機知の巧有れば必ず機知の敗有りの教訓を味わうことになる。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・劉向『説苑』成立年未詳。
・Merriam-Webster, Merriam-Webster.com Dictionary, Merriam-Webster Incorporated.
・Collins COBUILD Advanced Learner’s Dictionary, HarperCollins Publishers.























