【ことわざ】
釘の裏を返す
【読み方】
くぎのうらをかえす
【意味】
打った釘の先を裏側で曲げ、抜けないようにすることから、間違いのないように念を入れて確かめることのたとえ。


【英語】
・make doubly sure.(念には念を入れて確かめる)
【類義語】
・念には念を入れる(ねんにはねんをいれる)
・石橋をたたいて渡る(いしばしをたたいてわたる)
「釘の裏を返す」の語源・由来
「釘の裏を返す」は、木材などを突き抜けた釘の先を折り曲げ、さらに打ち付ける作業から生まれたことわざです。釘をまっすぐ打ち込むだけでなく、裏側に出た先を曲げることで、釘が抜けにくくなり、二つの材料をいっそう固く留められます。
ここでいう「裏」は、釘を打ち込んだ面とは反対の側を指します。「返す」は、突き出た釘の先を折り曲げて打ち返すことです。そのため、現在よく使われる「裏を返せば」のように、物事を反対から考えるという意味ではありません。
この作業を表す言い方には、「釘の裏を返す」のほかに、「釘の根を返す」「釘の穂を返す」「裏釘返す」などの形があります。いずれも、突き抜けた釘の先を曲げ、簡単には外れないようにすることを表しています。
古い用例としては、『鷹筑波集(たかつくばしゅう)』(1638年序・1642年刊、江戸時代前期、西武編)に収められた「おもひにくぎのねをかへしぬる」という句があります。ここでは「釘の裏」ではなく、「釘の根を返す」という形を用い、人と人との仲を、釘の先を曲げて固く留めることに重ねています。
この例では、釘を曲げ返す具体的な作業が、人の結び付きが揺るがないように固めるという比喩へと移っています。現在のように、確認や用心を表す意味へ広がる前から、「すでに結ばれたものを、さらに確かなものにする」という考え方が表れていました。
その後、『出世景清(しゅっせかげきよ)』(1685年・江戸時代前期、近松門左衛門著)には、「一尺二寸の大釘のうらをかへさず打たれば」とあります。この用例は、裏側へ出た釘の先を曲げずに打ったという、もとの具体的な作業を表しています。
一方、『源義経将棊経(みなもとのよしつねしょうぎきょう)』(18世紀初頭・江戸時代前期、近松門左衛門著)には、「源氏の御世はうら釘かやし、天長地久成べきに」とあります。源氏の世が、裏釘を返したように固まり、末永く続くという意味で、「裏釘返す」が、物事をいよいよ確実なものにする比喩として使われています。
このように、初めは実際に釘の先を曲げる作業を指し、やがて、人の仲や世の中の状態を固く保つことのたとえとなりました。さらに意味が広がり、約束や計画、仕事などについて、すでに注意したうえで、もう一度念を押し、間違いのない状態にすることを表すようになりました。
「釘の裏を返す」が表すのは、ただ慎重に行うことだけではありません。釘を打ったあとに先を曲げて仕上げるように、一度行った確認や処置に、さらに念を入れ、確実なものにするところに、このことわざの大切な意味があります。
「釘の裏を返す」の使い方




「釘の裏を返す」の例文
- 旅行の予約を間違えないよう、釘の裏を返すつもりで日時と行き先を再確認した。
- 委員長は釘の裏を返すように、行事の開始時刻を全員へもう一度伝えた。
- 契約書を提出する前に、担当者は釘の裏を返して記入漏れがないか点検した。
- 父は戸締まりを済ませたあとも、釘の裏を返すように一つ一つの窓を見て回った。
- 工場では事故を防ぐため、釘の裏を返す慎重さで機械の安全装置を確かめている。
- 大切な荷物が確実に届くよう、母は釘の裏を返して宛先と郵便番号を照合した。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・西武編『鷹筑波集』1642年。
・近松門左衛門『出世景清』1685年。
・近松門左衛門『源義経将棊経』18世紀初頭。























