【ことわざ】
嘘にも種がいる
【読み方】
うそにもたねがいる
【意味】
どんな物事にも、成り立たせるための元手や準備が必要だということ。嘘でさえ、本当らしく思わせるには材料がいるというたとえ。


【英語】
・You can’t make bricks without straw(必要な材料がなければ物事は作れない)
【類義語】
・品玉も種から(しなだまもたねから)
・蒔かぬ種は生えぬ(まかぬたねははえぬ)
「嘘にも種がいる」の語源・由来
「嘘にも種がいる」は、嘘のような本来は正しくない話であっても、人に本当らしく思わせるには材料が必要だ、という考えから生まれたことわざです。ここでいう「種」は、植物の種だけでなく、物事を生じさせるもと、物事が成り立つよりどころを指します。
「嘘」は、事実でないこと、また、人をだますために言う事実と違う言葉を指します。このことわざでは、嘘そのものを勧めるのではなく、嘘でさえ材料なしには成り立たないという形で、準備や元手が必要であることを説いています。
「種」という言葉は、古くから「物事を生ずるもと」という意味で使われてきました。『源氏物語』(1001〜1014年ごろ成立、平安時代中期)にも、物事のもとを表す「くさ」という古い用法が出てきます。
植物は、種がなければ芽を出しません。この分かりやすい自然のたとえが、人の行動や仕事、計画にも広がり、何かを実現するには、元になるものが必要だという教えにつながりました。
近い考え方をもつ古い言い方に、「品玉も種から」があります。「品玉」は手品のことで、手品でさえ種がなければ、どれほど上手な人でもできないという意味です。
「品玉も種から」の古い用例は、『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年序・江戸時代前期、松江重頼編)に出てくる「品玉とるにも種がなければならず」です。手品の「種」を材料や仕掛けのたとえに用いる点で、「嘘にも種がいる」とよく響き合います。
『毛吹草』は、俳諧(はいかい)の作法や句作に役立つ語彙を集めた書物で、7巻から成ります。句作に役立つ言葉を集める性格の書物にこの種の言い方が入ることから、近世には「種」を、物事を成り立たせる材料や仕掛けのたとえとして使う感覚が広く通じていたことが分かります。
「嘘にも種がいる」は、この「種」の比喩を、嘘という身近な行為に当てはめた表現です。嘘は事実でない話ですが、聞き手に信じさせるには、時刻、場所、理由、証拠らしいものなど、話を支える材料が必要になります。
そのため、このことわざは、嘘の作り方を教える言葉ではありません。むしろ、嘘のようなものでも材料がいるのだから、まじめな仕事や計画なら、なおさら準備が必要だ、という方向へ意味が広がっています。
表記には、「嘘にも種がいる」と「嘘にも種が要る」があります。「要る」は必要であるという意味をはっきり示す書き方で、ひらがなの「いる」は、ことわざとしてやわらかく読める表記です。
現在では、準備不足の計画、根拠のない説明、思いつきだけの言い訳などに対して使われます。どんなことでも、信じてもらい、形にするには、それを支える土台が必要だという教えを含むことわざです。
「嘘にも種がいる」の使い方




「嘘にも種がいる」の例文
- 嘘にも種がいるというように、根拠のない説明ではだれも納得しない。
- 企画を通したいなら、嘘にも種がいると思って、数字や資料をそろえておくべきだ。
- 彼の言い訳は細かい点が合わず、嘘にも種がいるという言葉を思い出させた。
- 嘘にも種がいるのだから、本当の計画ならなおさら準備が欠かせない。
- 友人を説得するには、嘘にも種がいると言われるほど、話を支える材料が大切だ。
- 嘘にも種がいるを教訓に、発表の前には調べたことをノートに整理しておいた。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年序。























