【ことわざ】
口は閉じておけ、目は開けておけ
【読み方】
くちはとじておけ、めはあけておけ
【意味】
余計なことをしゃべらず、周囲の様子や物事を注意深く観察せよという教え。


【英語】
・Keep your mouth shut and your eyes open.(余計なことを言わず、注意深く観察せよ)
【類義語】
・口は禍の門(くちはわざわいのかど)
・物言えば唇寒し秋の風(ものいえばくちびるさむしあきのかぜ)
「口は閉じておけ、目は開けておけ」の語源・由来
このことわざのもとになったのは、英語の「Keep your mouth shut and your eyes open.」です。日本語には「口を閉じて眼を開け」という形もあり、いらないことは話さず、目を開いてよく観察せよという教えを表します。
これとよく似た言い回しは、19世紀半ばのヨーロッパのことわざ集にも収められています。Henry G. Bohnの『A Polyglot of Foreign Proverbs.』(1857年・イギリス刊)では、イタリア語のことわざを集めた部分に「Bocca chiusa ed occhi aperti.」とあり、その英訳として「Mouth shut and eyes open.」が添えられています。日本語に直せば、「口は閉じ、目は開いて」という形です。
同書は、フランス語・イタリア語・ドイツ語・オランダ語・スペイン語・ポルトガル語・デンマーク語のことわざを集め、英訳を付したものです。さまざまな資料から表現を集め、それぞれの言語をその国の人に読み直してもらったことや、英訳の多くをBohn自身が手がけたことが、序文に記されています。
この記録から、口を閉じることと目を開くことを対にした教えが、遅くとも1857年にはイタリア語のことわざとして紹介されていたことが分かります。ただし、この一例だけで、ことわざが最初に生まれた国や人物まで特定することはできません。Bohn自身も、いくつもの言語に共通することわざがあると述べているため、ヨーロッパの広い地域に伝わった教えとして捉えるのが穏当です。
1857年の英訳「Mouth shut and eyes open.」は、二つの状態を短く並べた形でした。後には、「自分の口を閉じたままにし、自分の目を開けておけ」と命じる「Keep your mouth shut and your eyes open.」という形が用いられ、日本語でも「口を閉じて眼を開け」や「口は閉じておけ、目は開けておけ」と訳されました。
日本では、1964年に刊行された世界のことわざ集を出典とする形で、「口は閉じておけ、目は開けておけ」という表現が紹介されています。この時点で、英語の命令形を生かしながら、「口」と「目」を対照的に並べる現在と同じ形が定着していました。
ここでいう「口を閉じる」とは、何も話してはならないという意味ではありません。事情を知らないうちに余計な意見を言ったり、軽率に秘密を漏らしたりせず、発言を慎むことです。一方の「目を開ける」は、ただ目を開くことではなく、人の行動や周囲の変化、物事の成り行きを注意深く観察することを表します。
つまり、このことわざは、言葉を少なくするだけでなく、その間によく見て学ぶことを勧めています。思いついたことをすぐ口にするよりも、まず事実を見極め、必要なことだけを話すという、慎重な態度を教えることわざです。
「口は閉じておけ、目は開けておけ」の使い方




「口は閉じておけ、目は開けておけ」の例文
- 転校した初日は、口は閉じておけ、目は開けておけを心がけ、学校の決まりや友達の様子をよく見た。
- 祖父は新しい職場へ向かう孫に、口は閉じておけ、目は開けておけと教えた。
- 口は閉じておけ、目は開けておけの心得で店内を観察すると、客が困っている場所が分かった。
- 交渉の場では、口は閉じておけ、目は開けておけという姿勢が、相手の本当の希望を知る助けとなる。
- 初めて地域の会合に出席した父は、口は閉じておけ、目は開けておけを胸に、まず話し合いの流れをつかんだ。
- うわさだけで意見を言わず、口は閉じておけ、目は開けておけの教えに従って、事実を確かめることにした。
主な参考文献
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・小野忍・宮内秀雄・三木孝編『世界のことわざ辞典』福音館書店、1964年。
・Henry G. Bohn『A Polyglot of Foreign Proverbs』Henry G. Bohn,1857.























