【ことわざ】
頭の上の蠅を追え
【読み方】
あたまのうえのはえをおえ
【意味】
他人のことをとやかく言ったり世話を焼いたりする前に、まず自分自身の問題をきちんと始末せよという教え。


【英語】
・Sweep before your own door.(人をとがめる前に、自分のことを先に整えよ)
・Sweep before your own door before you look after your neighbour’s.(隣人の世話をする前に、自分の家の前を掃け)
【類義語】
・頭の蠅を追え(あたまのはえをおえ)
・己の頭の蠅を追え(おのれのあたまのはえをおえ)
・己が頭の蜂払え(おのがあたまのはちはらえ)
【対義語】
・棚に上げる(たなにあげる)
「頭の上の蠅を追え」の語源・由来
このことわざは、自分の頭のまわりを飛ぶ蠅を追い払わずに、よその人のことばかり世話しようとする姿をもとにしています。ここでいう「頭の蠅」は、実際の虫だけでなく、身にふりかかった問題や不始末を表し、「追う」はそれを片づける、始末するという意味をもっています。
古い形としては、「頭の蠅を追う」という言い方が用いられていました。『世間御旗本容気(せけんおはたもとかたぎ)』(1754年・江戸時代中期、升瓢著)には、「面々の思ひ付次第天窓(アタマ)の蠅(ハイ)を追ふべきなりとて」という用例があります。これは、めいめいが自分の側のことをまず処理するという意味で使われた古い例です。
この言い方には、近い形の表現もありました。為永春水の人情本『北娼俆談春色袖之梅(ほくしょうよだんしゅんしょくそでのうめ)』(天保12年序・江戸時代後期)には、「他の事より自分(てんでん)のあたまのはけをお直し」という例があり、「頭の蠅を追う」と同じく、他人のことより自分自身を整えるという発想が表れています。
この「刷毛を直す」という形は、身だしなみを整えるような身近な動作に寄せた言い方です。一方、「蠅を追う」は、頭にまとわりつく不快なものを追い払うたとえとして、より強く「自分の問題を始末せよ」という意味を示します。どちらも、他人の世話を焼く前に、自分の足元を整えるべきだという教えにつながっています。
明治時代になると、二葉亭四迷の小説『浮雲』(1887〜1891年刊行)にも、「自分の頭の蠅でもおうがいいや」という形が出てきます。ここでは、人をとがめる前に、自分のことをまず省みよという、現在の使い方に近い調子で用いられています。
その後、この表現は「頭の蠅を追え」「己の頭の蠅を追え」「自分の頭の蠅を追え」など、命令の形をとって定着しました。「頭の上の蠅を追え」は、その同じ考えを、蠅が自分の頭上にいる様子として分かりやすく言い表した形です。自分の問題がまだ片づいていないのに、他人の問題へ先に口を出すことを戒めることわざとして、今も使われています。
「頭の上の蠅を追え」の使い方




「頭の上の蠅を追え」の例文
- 人の机の散らかりを注意する前に、まず自分のロッカーを片づけるべきで、まさに頭の上の蠅を追えだ。
- 宿題を出していないのに友人の勉強計画に口を出すのは、頭の上の蠅を追えと言われても仕方がない。
- 家庭の用事を終えていないまま兄の手伝い方を批判したので、母に頭の上の蠅を追えといさめられた。
- 自社の連絡ミスを改めずに取引先を責める態度は、頭の上の蠅を追えという言葉に当たる。
- 地域の清掃日に隣家の落ち葉ばかり気にして、自分の家の前を掃かないなら、頭の上の蠅を追えというものだ。
- 友人の忘れ物を笑う前に自分の提出物を見直せという意味で、先生は頭の上の蠅を追えと話した。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・Henry G. Bohn『A Hand-book of Proverbs』George Bell and Sons, 1899。
・Henry G. Bohn『A Polyglot of Foreign Proverbs』Henry G. Bohn, 1857。























