【ことわざ】
虻もたからず
【読み方】
あぶもたからず
【意味】
人に寄ってくることの多い虻さえ近づかないほど、だれも寄り付かないことのたとえ。


【英語】
・not a soul(だれ一人いない、だれも来ない)
【類義語】
・門前雀羅を張る(もんぜんじゃくらをはる)
【対義語】
・門前市を成す(もんぜんいちをなす)
「虻もたからず」の語源・由来
「虻もたからず」は、虻が人や家畜に寄ってくる虫であることをもとにした言い方です。虻は、双翅目(そうしもく)アブ科の昆虫を指し、雌の中には人や家畜から吸血するものがあります。そうした虫さえ寄ってこない、という大げさな言い方によって、だれも近づかない寂しい状態を表します。
ここで大切なのは、「たからず」という言い方です。「たかる」は、一つの所に集まる、寄り集まる、群がるという意味をもちます。虫が物に集まる場合にも使われる言葉なので、「虻がたかる」は、虻が人や動物などに寄ってくる様子を表しやすい言い方です。
このことわざには、「虻もたからぬ」という形もあります。「ず」も「ぬ」も打ち消しを表す語で、「たからない」という意味を作ります。つまり、表記や言い回しに少し違いがあっても、言葉の芯は「虻さえ寄り付かない」という点にあります。
もとの発想は、虫が好んで寄ってきそうな相手にさえ、虫がまったく近づかないという誇張です。ふつうなら来るはずのものまで来ない、という逆の形をとることで、人も寄らない、人気もない、相手にする者もいないという意味が強く伝わります。
似た発想の言葉に「門前雀羅を張る」があります。これは、訪れる人がなく、門の前に雀が遊んでいて、網を張れば捕まえられるほど静かだという意味です。一方、「虻もたからず」は、訪問者が少ないという静けさよりも、虻のような虫さえ近寄らないほどだれにも相手にされない、というややきびしい調子をもっています。
このため、現在の使い方では、単に人が少ない場所をいうだけでは足りません。人から敬遠される、人気がない、孤立しているといった状態を、虫さえ寄らないという具体的な姿に置き換えて言うことわざとして用います。
「虻もたからず」の使い方




「虻もたからず」の例文
- 店主の態度があまりに横柄で、その店は虻もたからずの状態になった。
- 強い言い方ばかりする彼の周りには、いつの間にか虻もたからずとなった。
- 新しい企画は内容が分かりにくく、説明会は虻もたからずだった。
- 近所づきあいを大切にしなかったため、その家は困った時にも虻もたからずとなった。
- 昔はにぎわった遊園地も、手入れを怠れば虻もたからずになりかねない。
- 人をばかにする態度を続けていては、最後には虻もたからずになる。
主な参考文献
・松村明監修、小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』Cambridge University Press.























